1/144スケールの小さな飛行機たちの魅力
小学生の頃、駄菓子屋にたむろしては体に悪そうな駄菓子を食べあさり、舌を真っ赤や真っ青に染めてケラケラ笑っていました。現代の子供たちはあまり着色料で舌に色が付くということを体験する機会はなさそうだが、我々の世代が子供の頃はそんな駄菓子ばかりだった。そうした駄菓子をほおばりながら、わずかな小遣いの中から入手可能な玩具も次々に手にしていた。スーパーカー消しゴム、銀玉鉄砲、スチロール製のグライダー等々・・・。そんな中でも私とその周りの連中がよく買っていたのが「100円プラモ」だった。現代の価格に換算すれば300円〜500円くらいのものになるのだろうか。その100円プラモをその当時、持てる技術をすべて注いで作り、みんなで見せびらかし合っていたものだった。戦車やクルマ、飛行機に船、TVアニメの主人公ロボの類似品等さまざまなジャンルのプラモがあった。幼い子供が作ることをメーカーもしっかりと考慮していて、組み立ては簡単、塗装しなくても2色くらいの成型色でできていてカラフルに出来上がる。それで子供は満足していた。なんともなまぬるい時代だったのだ。

そんな幼少期に作った「100円プラモ」がなんと現在でも販売されている。当然、物価は上昇しているので100円では手に入らないが、当時のまま、もしくは少々手を加えて現在でも生き残っている商品が実はけっこうある。生き残っている率が比較的高いのが今回紹介する飛行機モデルだ。当時、生産、発売していたメーカーはすでに無くなっているケースがほとんどだが、その金型を他社が引き継ぎ、今なお生産され続けている飛行機たちに敬意を表してここで紹介してみたい。また、新規に設計、生産されている商品もちゃんと存在している。当然、現代のクオリティで製造されており、模型としてもかなりこだわった逸品だったりする。新旧織り交ぜながら小さな飛行機の大きな魅力をお伝えしていこう。

 敵陣深く高速で侵入

イマイという模型メーカーは当時、大手の部類に入るメーカーで、スケールモデルからTVアニメもの(類似品ではなくちゃんと承認を受けた商品)や独自のシリーズである「ロボだっち」シリーズ等人気商品が山ほど存在していた。TVCMまで放映していたこともあった。しかし、数年前、そのイマイ社は姿を消した。時代の変化に取り残された老舗模型メーカーはなすすべなくただ、静かに消えて行った。その遺産を受け継ぐメーカーは多い。同社の金型を引き継ぎ、生産を続けているメーカーだ。それだけ魅力的な製品が多く存在していたという証しだろう。画像の百式司令部偵察機(百式司偵)も、以前、イマイが発売し、現在はアオシマ社がそれを引き継いで生産しているプラモデルの1つだ。現在、アオシマ社が発売しているこの百式司偵は同一の機体が2機セットとなって販売されている「1/144 双発小隊」シリーズの1つだ。1箱買えば2機入っていて製作が2度楽しめるお得なキットだ。古い設計ながら部品のクオリティはなかなかで、合わせ面のズレや反り返り、バリ等はほとんど無く、ストレス無く組み立てられる優秀なキットだ。

今回はいくつかのディテールアップを施して全体のクオリティを上げて「100円プラモとは思えない」(実際100円ではないが)仕上がりを目指してみた。幸い、デカールは最近新たにデザインされたような美しいものが付属していてその仕上がりを手助けしてくれている。手を加えたヶ所はエンジン部カウルから排気管を出した、コクピットおよび後部座席部のスクラッチ、左主翼前部のピトー管および機体上部のアンテナの金属化等だ。さらに汚しや墨入れ等の基本的な手法も使ってある。こうして丹念に仕上げてやると手のひらサイズの小さな飛行機であってもしっかりと見栄えのする模型になってしまう。元々の基本設計がしっかりしているからこそちょっとしたディテールアップで見栄えが良くなるのだろう。

百式司偵は敵陣奥深くに潜入し、敵の状態を詳細に観察し、高速で逃げ帰るというまさに偵察任務に特化した飛行機だ。したがって武装は一切無く(改良型で武装を施した機体があった)、その代わりにエンジンを2基搭載してどの航空機よりも高速で飛行できるよう設計されている。当時の日本の航空機のデザインとはかけ離れた空力特性を考慮した機体は独特の味がある。極細の胴体と機首まで伸びた連続したアールの形状を持つキャノピーが特徴だ。その細身の胴体より太いエンジンカウルが左右の主翼にどっしりと備え付けられている。時速600kmを超える高速で敵陣に侵入し、瞬時にその敵陣の状態を観察、すぐさま司令部に報告すべく引き返すというフットワークの良さはこの百式司偵ならではの行動だ。実際、当時の日本軍においてこの活躍の効果は絶大だったらしく、偵察任務の重要性がこの機体で実証されたようなものだったらしい。

モデルではコクピット内部は一切のモールドや部品は無く、完全に省略されている。そこにプラ板やプラ棒、真鍮線等で座席や計器類、操作系のパーツ等を自作し、組み込んでいく。塗装も細かい作業になるが、細部まで丁寧に塗り分けていく。キャノピーを被せてもある程度しっかりと見えるよう配慮しながら組み付けて、完成後も機内が見えるように製作した。外装は三菱製航空機共通の濃緑色と明灰白色で基本塗装後、識別色の黄色や細部の塗装を施し、デカールを貼り付ける。完全乾燥後、クリアーを吹き付けてデカールを剥がれにくくし、最後に墨入れ、汚しを加えていく。この工程はどの機種でも基本的に共通の仕上げ方だ。この後紹介していくすべての機種に共通している。

本来、双発式航空機は大きめのものが多いが、この百式司偵は小さい。ゼロ戦よりひと回り大きい程度だ。こうした小型の機体に双発(2つのエンジン、プロペラを装備している機体)装備という組み合わせは前述のような高速移動に目的を特化した結果だろう。すべてにおいて他の日本陸海軍機の雰囲気とは異なった容姿だ。例えばこのエンジン、プロペラがジェットエンジンに代わっても充分に見栄えのする機体になることだろう。大日本帝国の隠れた名機だ。1/72や1/48スケールでもタミヤやハセガワ等から高いクオリティのキットが発売されている。いつかそれらも作ってみたいと思っている。ちなみにこのキットは2機セットだ。もう1機分未組み立ての状態で残っている。今回とは違った仕様に仕上げてみるのも面白そうだ。

 大日本帝国の戦闘機の代名詞

零戦と言えば日本人なら誰でも知ってる第2次大戦の日本の名機だ。この零戦にはさまざまなバリエーションが存在し、本来、三菱製だが、他社でも生産されていたという当時、もっとも生産数の多い戦闘機である。さまざまなメーカーからあらゆるスケールのモデルが発売されている。模型店に行けば必ず在庫している程有名かつ人気の戦闘機だ。そんな中から今回はちょっとマイナーなメーカーSWEET社製1/144スケールキットを紹介しよう。このキットも同一の機体が2機セットで販売されているので、1機作ってももう1機残るので楽しみも2倍だ。1/144スケールのキットはこうした2機セットという販売形態の製品が実に多い。なんだかとても得をしたような気になる。まぁ、値段はしっかりと2機分だが・・・。

SWEETのキットはなんと言っても1/144スケールとはとても思えない程細かいディテールやモールドが再現されていて、驚異的な仕上がりになるすばらしいキットだ。よくぞこの小さなスケールの中でここまでのクオリティで再現できたものだと思い、調べてみると元タミヤの社員だったヒトが立ち上げた会社だということだそうだ。なるほど、タミヤでは1/144スケールは製品化していないし、それを同社と同等のクオリティで再現しようというのもそいした経緯からならうなずけるというものだ。私が製作した1/144スケールのキットの中でもそのクオリティの高さはずば抜けている。細かすぎるくらいしっかりと彫り込まれた凹モールドやプロポーションの良さ、またストレスを感じさせないしっかりとしたパーツ同士の合いの良さ、モールドは細かくてもパーツ割りは最小限に止め、組み立てやすさもちゃんと考慮されているという文句無しの傑作キットである。

これほどのすばらしい1/144スケールキットが発売されていたというのはこのキットと出会うまで正直、知らなかった。ヘタな1/72スケールの本格的な航空機モデルよりもリアルな仕上がりになる。まだまだ小さな会社なようでシリーズ展開は数機種のバリエーション違いをラインナップしているだけだが、今後、どんどん新製品を出していってもらいたいものだ。大いに期待できるメーカーだ。例によってコクピット内部も自作によって再現したのだが、誤ってキャノピーをマスキングせずにクリアーを吹き付けてしまった。したがってせっかく再現したコクピット内部はまったく見えなくなってしまった。もう1機の方を製作する際はこんなことの無いよう注意して作りたいものだ。再チャレンジの機会を与えてもらったと思って・・・。

 厚い信頼の急降下爆撃機

九九式艦上爆撃機。アリイというメーカーが発売していた「100円プラモ」だ。現在はマイクロエースという社名に変わって生産されている。このキットも2機セットだが、同一機種2機ではなく、当時それぞれ単品で発売していた2機種を1箱にセットした構成になっている。この九九艦爆は流星改とセットで500円というお手頃な価格だ。モールドもしっかりと凹モールドで彫られ、この価格帯ではなかなか良いクオリティだ。独特の形状の主翼、尾翼は急降下爆撃に特化したデザイン。大戦初期から活躍し、日華事変や真珠湾攻撃等でも大きな戦果を揚げている。空母の艦載機ということでグレーの機体色が多く、この九九艦爆の特徴の1つにもなっている。その姿は普段は大人しくじっとしているが、獲物を発見すれば大きな翼を広げ、瞬く間に獲物に襲いかかる梟のようだ。

マイクロエース社製のこのキットはとても作りやすい。少ないパーツ構成と成型色が白ということでどんな色にも塗装しやすい。また、キャノピーのクリアパーツもよく磨かれていて透明感が高い。これで1機あたり250円というのは破格だと思う。最低限ではあるがデカールもしっかりと付属している。プロペラの中心部にあるスピンナーと呼ばれる卵型の尖ったパーツがこの機体には装備されていない。軸部が剥き出しになっている状態も小さいながらもしっかりと再現されている。主脚は1つのパーツで出来ており、細かい作業も不要でただ主翼下に接着するだけだ。もっとも組み立てやすいキットの1つだろう。塗装は単一色での塗装で良いので最小限のマスキングで全体を塗装できる。その後細かい部分を筆塗りして完成と、実に簡単だ。

胴体下部には爆弾を吊り下げている。大型爆撃機のように機体内部に格納することはできない。この吊り下げた爆弾を敵艦船に正確に落下させるため、翼は大きく、急降下時でも機体のブレを無くすという考え方だ。決して高速で飛べる機体ではないが、目標になった敵艦船はこの九九艦爆が急降下で向かって来られれば撃ち落さない限り逃げられない。零戦等の戦闘機の護衛に守られながら目標艦船に達し、戦闘機が交戦しているスキに高高度から一気に降下してくるのだ。海戦主体の日本の戦術に欠かすことのできない機体である。実に味のある古臭いデザインからは想像し難い攻撃の仕方だ。真珠湾での九九艦爆の活躍はその戦果と正に比例していたのだ。

 零戦の陰に存在した高性能戦闘機

中島飛行機という会社は現在のスバルの前身だ。その中島が誇る高性能戦闘機がこの隼だ。極限まで細くシェイプアップしたスリムな機体は空力と軽量化を極めた証しだ。あらゆる部隊に投入され、大戦末期には特攻隊機としても使用された航空機である。各部隊によってさまざまなカラーリングが存在し、現場で施した迷彩柄も無数に存在している。史実に忠実に模型で再現することは非常に難しい機体だ。普通に単色、もしくは上が濃緑色、下が明灰白色という塗装も無くは無いが面白みに欠けてしまう。そこで今回、選んだのが画像のような迷彩塗装だ。隼らしい迷彩柄でとても気に入っている。こんな塗装も時には良いものだと実感した。筆で…と塗っていくのだが、気をつけないといつのまにか規則的に並んでしまって迷彩になっていない…ということに陥りやすい。注意が必要だ。

キットはミツワモデルというメーカーの製品だ。このキットは完全に数十年前の金型そのままという状態の壮絶なキットで、現代の目で見れば、「よくこんな状態のキットで喜んでいたものだ」と目を覆いたくなる。バリや歪み、反り返りはもちろん、パーツの変形や設計の甘さ、合いの悪さ等々何でも来い状態。画像のようにしっかりと仕上げるには相当な努力が必要なキットだ。200円という価格なだけに文句は言えないが、パテで成型したり切ったり削ったりと「工作」をたっぷりと堪能させてくれる。おそらく設計は高度経済成長真っ只中の時代だったのだろう。当時の様子が思い浮かばれる、今では貴重な製品だ。パーツ割りも現代では考えられないような部分が多々見受けられ、当時の開発陣の努力が伺える。

このシリーズはけっこうたくさんの機種がラインナップされている。それらを作ってみることでプラモデルの進化という部分がよく観察できる。ある意味、歴史的資料といった製品だ。作り手の努力次第でしっかりとも仕上がるだろうし、当時のクオリティのままにも仕上がるだろう。加工技術の練習材料として購入するなら良いが、そのまま作って飾ろうというのなら他のメーカーのキットの方が良い。腕に自信をつける、もしくは自信があるというヒト向けだ。私もどんな製品なのか現物を見るまでは解からなかったが、このキットを手にした時、「よし、やってやろう」という意欲が湧いた。懲りもせず同シリーズの零戦も購入してしまった。いつかしっかりと製作し、ちゃんと見栄えのする機体に仕上げてやりたいと思う。

 アメリカの傑作戦闘機

ちょっと趣を変えて米軍戦闘機の登場だ。マイクロエースに変わる前、まだアリイだったころの製品を昔、購入していて作っていなかった長期在庫品を引っ張り出してきて製作したものがこのP51マスタングだ。まさに100円飛行機の代名詞とも言えるキットだった。箱絵に忠実に塗装をしてみたのがこの状態だ。にぎやかなカラーリングがいかにもアメリカンなこのマスタング。現在でも実働する機体が数多く現存している、世界的に大人気の傑作機だ。映画「プライベート・ライアン」のクライマックスで登場する戦闘機がこれだ。それまでの米軍機と違ってスマートで小柄なボディは機動力に優れ、日本の名機、零戦や疾風、隼等も凌駕する性能を持つ。大戦後も朝鮮戦争等で引き続き使用されていたことからも傑作機であるということが実証されている。

キットは古いながらもプロポーションは秀逸で、マスタングの特徴をしっかり捉えている。キャノピーの透明パーツは分厚く中が見えない程で時代を感じるが、現在、発売されているキットでは改良されているのだろうか。武装等のパーツも豊富にセットされていて重武装の無骨なスタイルも再現できるようになっている。今回の塗装は機体はシルバーの単色塗装なので、より金属感を再現すべく、ガン用塗料のステンレスシルバーという色を使ってみた。ステンレスとは言っても艶々のメッキのような仕上がりではなく、磨きを行う前の表面の荒い状態のステンレスのような仕上がりになる。本来の使い方ならば、これを丹念に磨き上げることでメッキのような美しいシルバーに生まれ変わるのだが、今回は吹き付けたそのままの状態にした。

デカールや細部の塗装を施した後、クリアーを吹き付けて表面処理。程よい金属感が再現できた。たまには日本以外の国の航空機も作ってみるとその国その国の特徴のようなものが感じられて面白い。私は第2次大戦時のプロペラ機(いわゆるレシプロ機)が好きなのだが、大戦後のジェット機等もこれらと同じようにディテールアップを施してやれば、とても「100円プラモ」には見えない仕上がりになるキットは多数存在する。短時間でサクッと作れるのが格安キットの良いところ。ちょっと時間が空いた時にでもぜひ試していただきたい。たった数百円で金額以上に楽しめるハズだ。


(2008.04.18)