てのひらサイズの戦車たち
このところ仕事が忙しかったこともあり、なかなか更新できずにいた訳ですが、その間、コツコツとやってはおりました。「場所をとる」、「製作に時間がかかる」、「材料費を削減」等の諸事情から手を出すモデルはどんどん小さくなり、今ではすっかり1/72スケールにハマっております。昔からこのサイズのモデルは存在してはいましたが、天下のタミヤの1/35スケールの人気があまりにも高く、今日までほとんどマイナーな存在のままきました。現在でもハセガワから1/72スケールの戦車シリーズは発売されていますが、内容はすでに2〜30年前の設計で現代のレベルの製品ではありません。ディテールアップに自信のある人でないとリアルに完成させることはできません。が、世界に目を向けてみると、意外や意外、1/72スケールはとてもポピュラーで世界各国の模型メーカーからさまざまな製品が発売されています。最近では多様なニーズに応えるべく、日本の貿易商社や模型メーカーが各国の製品を輸入、販売してくれています。なんとも良い時代です。以前から「小さいモノ好き」な私はこの1/72スケールのモデルがこんなにも多数発売されていたということはもっと早い段階で知っておくべきでした。こうして早速手を出したのが以前レポートでも紹介したハセガワ製4号駆逐戦車。低い車高と回転砲塔でないスタイルがステキな車輌です。そして気付けば画像の有様。増えつづけるコレクションも5台あっても1/35スケールモデル1〜2台分のスペースに収納できてしまいます。ステキです。
さて、今回の特集では3社の1/72スケールモデル6台を紹介していきます。比較し易いようにという訳ではありませんが、同一車種が揃っておりますので比べてみてください。
数で勝負のM4シャーマン
圧倒的物量で連合軍を勝利に導いた戦車、米国製M4シャーマン。ドイツ軍から見れば「倒しても倒しても沸いて出てくる」キモい存在だったことでしょう。威力の高い主砲を備えているでもなく、分厚い装甲で弾を跳ね返すでもなく、ただただ前進し、破壊しては次のシャーマンが後から現れるという不気味な戦車に見えたに違いありません。そのシャーマン、アメリカで製造され、米軍で使用されただけではなく、英軍、露軍その他連合軍各国に供給され、あらゆる戦線で活躍しました。「シャーマン」という俗称は英軍でつけられた愛称だそうです。このシャーマン、M4という名称ですが、改良を重ね、無数のバリエーションが存在します。大きく分けてM4A1、A2、A3、A4の4タイプに分類できます。その中からいくつか紹介しましょう。
中国トランペッター社製M4A3です。オーバーフェンダー+ワイドキャタピラが特徴です。なんだかチューンしたスポーツカーのような姿です。また、主砲も一番威力の高いものが搭載されています。トランペッター製1/72モデルは部品点数が少なく、サクサクと組み立てられて、しかもけっこう良いディテールとバランスの良いプロポーションが好印象。小さな模型としては充分に満足の行くレベルのクオリティに仕上がります。とくに「組み立てやすさ」の部分では非常によく考えられていると思います。スケールモデルは部品点数を増やしてとことんリアルに作る傾向にあるのですが、同社の製品を組み立てるとこういった傾向が必ずしも良いことではないと実感します。確かに部品点数を増やせば細かいディテールが再現でき、とことんリアルになっていきます。しかし、誰もが気軽に取り組める模型ではなくなってしまいます。僅かな時間を使ってサクサク作るプラモデルではなくなってしまいます。「ちょっと1台作ってみようかな」と思ったヒトが買って帰って数時間で完成できる模型も必要だと思います。模型を趣味としている方々のほとんどが「究極の○○」を目指しています。そういう方々は部品点数の多いハイグレードなキットを選べば良いし、初心者や気軽に作りたいヒトはこのトランペッター社製のような簡単に組めるキットを選べば良いのです。上達してくるとこうした短時間で完成するキットでは物足りなくなり、よりリアルなキットにチャレンジしていくようになります。そこで「あの○○製キットはダメだ!!」とか言うヒトはちょっと・・・どうなんでしょう?私は初心者からベテランまで技量に応じたキットがあって良いと思うし、どちらも納得できるようなすばらしいキットがあっても良いと思うのです。そういった意味で、このトランペッター社製M4A3はとても良いキットなのです。細かい作業が苦手というヒトでもそれなりにしっかりと仕上がるハズです。
モールドは1部省略されているヶ所もありますが、全体のバランスがとても良いキットです。キャタピラは他社製品同様ゴム製ですが、長さもぴたりと合い、パターンもけっこうリアルに再現されています。私なりのディテールアップヶ所としては真鍮製のアンテナを自作で追加しました。これはけっこうどのモデルでもやる私お得意の工作で、この車輌に限ったことではありません。また、主砲先端はマズルブレーキが装備されていて、その奥は穴が開いていませんでした。そこでピンバイスで穴を開け、主砲らしく仕上げました。改造ヶ所はそのくらいですが、なかなかどうしてしっかりと「シャーマン」してます。もっとも強そうなシャーマンです。こんなシャーマンもアリですね。被弾痕を描こうかとも思ったのですが、シャーマンの場合、被弾=撃破なのでやめました。
これまたトランペッター社製M4A3です。こちらはノーマルの細いキャタピラのタイプです。この車輌の特徴はA3タイプでありながら初期のA1と同じ小さい砲塔が装備されている点。角張った装甲板ボディと鋳造の砲塔が実にアンバランスです。このアンバランスさが私的にはツボで、弱々しさバツグンの1台です。付属のデカールの猛犬だか狼だかのイラストがまったく強そうに見えなくて最高です。説明書によると砲塔の★マークは貼らないという指示でしたが、やはりシャーマンには★マークということで貼らせていただきました。砲塔上部中央にはスポットライトが装備されています。別パーツでクリアレンズでも付いていれば良いのですが、無いので塗装のみで再現してあります。前面装甲板右上には「BAD NEWS」という文字が。これもとくに貼る指示が無いデカールだったのですが、その意味不明なフレーズに惹かれ、貼ってしまいました。
リアには荷物を乗せてみました。ジェリカンや弾薬箱、缶等を並べ、さらにボディ上面にも予備転輪、弾薬箱、ジェリカンを載せました。シャーマンの当時の画像を見るとたいてい砲塔後に荷物が満載されています。その姿を再現してもよかったのですが、プロポーションやモールドを比較してみたかったので控えめに載せてあります。ちなみにリアにも「BAD NEWS」が貼ってあります。右の画像では見えませんね。しかし、驚きなのは前項で紹介した同社製M4A3とボディはオーバーフェンダーを除いて共通だと思っていたのですが、まったく金型が違うようです。各部のモールドの位置がすべて微妙に違います。どちらが先に発売されたのか知りませんが、わざわざ新規に金型を起して生産しているあたり、なかなかあなどれません。
さて、もっともシャーマンらしいシャーマンの登場です。香港の模型メーカードラゴン社製M4A1です。鋳造ボディのこの姿こそが元祖シャーマンです。虫のようにずんぐりとした鋳造ならではのボディがたまりません。そしてこのドラゴンというメーカー、タダモノではありません。さっきの話しで言うところの完全に上級者向けモデルです。わずか8Cm程の小さなボディに無数の細かい部品をピンセットで取り付けていきます。さらにエッチングパーツ(金属製の非常に細かいモールドやシャープな薄さを再現したパーツ)まで使っており、もはや顕微鏡が必要かと思う程細かい作業を要求されます。ヘッドライトガード左右、リアの荷物を乗せるラック、エンジンルームの通気孔(スコップの後ろにあるおむすび型の部品の前面)がそのエッチングパーツで再現されています。
転輪回りのパーツもこれでもかというくらい細分化されていて強烈です。このサイズの模型ではやりすぎなんじゃないかと思える程の細かさです。砲塔上に搭載されている機銃も糸のように細いプラ製パーツを組み付けて完成しています。なんと上下に可動します。信じられません。とにかく細かい部品の数々を1つ1つ丁寧に組み付けていき、このシャーマンは完成しているのです。確かにハセガワやトランペッター製のキットと比べると明らかに別次元のクオリティですが、これだけ手の込んだ模型を完成させるだけの技量の持ち主は限られてしまいます。私も完成させはしましたが、「また次も」という気にはなかなかなれません。やはり気軽に作れるハセガワやトランペッターの方が親しみが持てます。ちなみにエッチングパーツを使わなくても同じ部品のプラパーツも付属しているので組み立ては可能です。あえてエッチングパーツを付属してくれているのはなんだか「挑戦」的なので意地でも使って完成させようと思った次第です。
ちょっと解かりづらいですね。エッチングパーツのシャープさをご覧いただこうかと思ったのですが・・・。左フロントフェンダー上に乗っているのは土のうで、これはフジミ製1/76スケールの情景キット「家、見張り台」に付属していたものです。スケールが違いますが、このサイズではほとんど違いが解からないくらいのレベルなので使ってみました。実はこの土のうの下には小さな穴が開いていて、説明書ではその穴を埋めるよう指示されていたのですが、忘れて塗装をしてしまったのでそれを隠す為に乗せたのです。
こうして3台のシャーマンを比べてみるとそれぞれに良いところがあって面白いものです。トランペッター製は組み立て簡単、初心者も安心、ドラゴン製は究極の1/72スケールモデルで完全に上級者向けモデルといった感じです。どちらもすばらしいキットです。
現代でも通用する低重心戦車
マイナーな戦車ですが私の好きな1台、ドイツ軍4号駆逐戦車。ハセガワ製は以前レポートしたのでそちらを参考にしていただきたい。そして今回紹介するのは右の1台、ドラゴン製。シャーマン程ではありませんが、やはり細かい部品がザクザク。ピンセットが無いととても完成できません。さて、この4号駆逐戦車、なんと言っても特徴はその低い車高。車高が低ければそれだけ標的になりにくいという発想から生まれたこのボディは現代の超ハイテク最新戦車にも共通しているコンセプトです。ドイツでは第2次大戦当時からすでにこういう発想を持っていたということですね。スゴイ国です。
説明書の塗装例の中にあったこの迷彩塗装がとても変わっていて惹かれてしまったので再現してみました。ベースはダークイエローで緑の部分は適当な色が無かったので日本軍の零戦の暗緑色にカーキドラブを混ぜ、調色しました。キットには転輪がなぜか3台分くらい入っていて箱を開けた瞬間から威圧してきます。なんでそんなに入っているのか・・・?そしてこのモデルで特筆すべきはリアマフラー。普通にランナーにくっ付いていて切り取って接着するのですが、接着して見てびっくり。なんとマフラーの排気吹き出し口の中に十字のモールドが。どうやって再現したのか、信じられないような驚異的再現度です。画像でもかすかに見えていますが、ただのモールドではなく、この十字の奥にはさらに空洞が続いているのです。凄まじい部品です。そしてボディ両サイドには追加装甲板を取り付ける為のステーが8個づつ並んでいます。ハセガワ製でも付いていましたが、このドラゴン製ではこんなちいさな(3mm程でしょうか)部品にまでしっかりとモールドが彫り込まれています。呆れてしまうくらいのクオリティです。
で、とりあえず5台を並べてみる
たばこで大きさをイメージしてください。小さいですね。こんな小さな戦車でもしっかりと(ウマいヘタではありません。気持ちの問題です)仕上げてやればちゃんと「模型」しています。欧州ではこの1/72スケールのモデルは1/48や1/35と並ぶくらいの人気だそうで、メーカーが力を入れているのもうなずけます。そのうち日本にもそうした1/72スケールの波が押し寄せてくるのでしょうか?私的には人気が無いのが良いという部分もあったりするのですが・・・。確かにドラゴンをはじめ、トランペッター等海外の模型メーカーの製品が続々と日本に入ってくる中で、確実に1/72スケールモデルも増え続けてきています。今後の展開が楽しみです。
強烈なおまけの1台・・・
現代戦車も1台。イギリス陸軍の最新戦車チャレンジャーの2型です。さらにこのモデルはドーザーブレード(ブルドーザーのアレですね)付きモデルです。ほぼ現代の戦車に手を出すことは皆無である私がなぜこの車輌に手を出したのか・・・?それは「ドーザーブレード」だからです。こういうちょっと変わった仕様だと何だか惹かれてしまいます。模型として生産される車輌はほとんどが戦闘態勢の状態であり、このような戦闘外任務時の姿をモデルアップされることはあまりありません。なのでこれは面白いかもしれないと思い、購入したのです。作ってみてこの思いは当たっていたと実感しました。めずらしく現代の戦車なのにとても気に入ってしまいました。メチャクチャかっこいいです。
1/72スケールなのに全長(砲の先まで)17Cmに迫るデカさです。しかし全高はシャーマンより全然低く、いかにも現代の戦車らしいシャープなシルエットです。また、緑と黒の独特の迷彩塗装もこの車輌の特徴で、夜間の戦闘ではこの迷彩が威力を発揮しそうです。この迷彩はドーザーブレードにまで施されています。この車輌の製作にあたってはいつもの「汚し」はしませんでした。現代兵器は戦闘任務より演習等の訓練による稼動の方が多いので、激しく汚れるシチュエーションがあまり無いと判断しました。まぁ、実際にはイラク等の有事では活躍していましたが・・・。ドーザーブレード先端と転輪、キャタピラ等ごくわずかな部分のみ軽く汚してあります。前方の赤がけっこう目立ちますね。実際に見るとこれ程ではないんですが・・・。
メカメカしいこの姿・・・。実在の戦車というよりも、もはやSFチックです。こんな戦車が実際に攻め込んできたら・・・絶対逃げるしかありません。現代の戦車ではドイツのレオパルドやアメリカのM1A1エイブラムス等が有名だが、どれもこのチャレンジャーと同様に低く幅広のシルエットに強力な主砲を装備していてデザイン的にどうも個性が弱く、あまり好きになれません。ですが、そんな中、このチャレンジャーだけはちょっと他とは違う何かを感じるのです。あまり英軍の車輌は取り上げる機会が無いのですが、現代車輌を、それも1/72スケールで選ぶとなると限られた製品の中から選ぶしかありません。たまたま見つけたこのドーザーブレード付きチャレンジャーに僅かな魅力を感じ、製作してみる気になったのです。普通のシルエットのバージョンしかモデルアップされていなかったら手は出していなかったでしょう。
どの角度から見ても非常にメカメカしい車体です。光の加減でかなり緑が明るく見えますが、実物はもう少し暗めの緑です。また、黒も少し灰色を被せ、明るめにすることで明暗のバランスを取ったつもりなのですが、どうも古いデジカメではそういう細かい色合いがうまく再現されません。さて、模型の話しですが、ドラゴン製のこのチャレンジャー、相変わらず実に細かい部品構成です。ドーザー部分等は組み立てていて「ホントにこれでスムーズに取り付けられるのか?」と思う程アームやダンパー等が細かく部品化されていますが、意外とスムーズに取り付けできました。ただ、ドーザー部後、車体前面下に牽引フックが付くのですが、これはそのまま付けるとドーザー部が接触して取り付けできません。ステーだけを残して削り取らないといけません。
また、ヘッドライトが説明書では取り付けの指示がありません。が、明らかに取り付ける場所に穴が開いており、これは取り付けないといけません。ドラゴン製品ではけっこうこういう説明書の指示欠落が多かったりします。さて、右の画像ではたばこと大きさの比較をしています。シャーマン等に比べると化け物のようにデカいのがよく解かります。砲塔上に付いている機銃はドラゴンお得意の上下可動式。とても細くて脆いアームで支えられています。側面の追加装甲板はこのスケールでもとても分厚く、実車の厚みがどれほどのものかと想像してしまいます。ノーマルのチャレンジャーではこの装甲板は付いていません。それにしても低いですね。たばこの箱の半分くらいの高さしかありません(機銃を除く)。
で、シャーマンとの比較。同じスケールとは思えませんね。シャーマンがドーザーで簡単に押しつぶされてしまいそうです。
いかがでしょうか?定番の1/35スケールだけではなく、こんな小さなスケールでもこのようにさまざまな車種が製品化されています。メーカー各社、コンセプトはさまざまですが、比較的組み立てやすく作られていて初心者でもそれなりのレベルに完成させられるモデルが多いです。完成後も場所を取らず、1/35スケール1台のスペースに1/72スケールなら2〜3台は飾れます。小さいモノ好きには最高の模型であります。
ちなみに日本のメーカーではハセガワが今も1/72シリーズを、フジミが1/76スケールのシリーズを発売しています。海外メーカーでは紹介したトランペッター、ドラゴンを中心にドイツ・レベル社等各社から発売されています。値段は日本のメーカーの製品がすべて¥1000−以下、海外メーカー製のモノで¥1500−〜¥3000−の間くらいの価格です。海外製の方が高いのは輸入品であることもありますが、実際に組み立ててみればその金額なりのクオリティであることに充分納得できるハズです。さぁ、アナタもサクッと1台いかがでしょう?けっこうハマりますよ。
(2007.08.30)
名車中の名車
以前タミヤ製1/48でレポートしたタイガーI型。今回はハセガワ製1/72スケールでの製作です。キットは後期型でしたが、「ジャーマングレーのタイガーIを作りたい」ということで初期型に作りました。幸い、後期型のキットにも初期型のパーツがランナーに残っていて説明書に無いパーツで組み立てていけばおのずと初期型になるというありがたいキットでした。厳密に言えば少々違う部分もあるかとは思いますが、そういった部分を少しでも目立たなくするために努力しております。このところ海外メーカーの1/72を中心に製作していたので、古い設計の日本製キットは久しぶりになりますが、やはり時代を感じてしまいます。モールドの甘さや部品の合い等、多々問題があり、しっかりとした工作を要求されます。とくに後期型であるこのキットをムリに初期型にしているのですからなおさらです。タイガー系戦車お約束の転輪の多さを克服すればあとはわずかな部品の取り付けで完成してしまう手軽さは1/72スケールならでは。それでは細かく見ていきましょう。
初期型の特徴である複雑な取りまわしのマフラーが印象的です。車体上面に露出する長いマフラーは左右一体のV字型部品で構成され、リアルさに欠けていますが、ここは塗装でなんとかします。サビ&汚れを効果的につけてやることで雰囲気を出してみました。砲塔上面はキットに付属の初期型用部品を取り付けてあります。キューポラがかなり簡略化されていますが、初期型らしい部分の1つであります。この砲塔上面パネルはタイガーI型では意外とシンプルなパネルになっています。余計なものが一切無く、必要最小限のハッチ等があるのみです。実車では異常なまでに分厚い装甲板ゆえ、細かな装備品を取り付けることが困難だったのでしょうか・・・?それゆえ、汚しの表現はとくに難しい部分です。いろいろな装備品が付いている部分より、何も無い平面な部分の方がディテールアップは難しいのです。
迫力ある前面。初期型には車体上面左右の角にボッシュライトが付きます。後期型で組み立てる際には不用のパーツで、ここの取り付け穴はパテ等で埋めるよう指示されています。代わりに後期型では前面機銃と操縦手用小窓の間(中心位置)に1つだけボッシュライトが付くことになります。これをつけずに取り付け位置のマーキングモールドを削り取り、平面にしました。また、この前面装甲板と側面装甲板の繋ぎ目部分には大きく隙間が出来てしまいます。これはパテで埋めてしっかりと成型しました。せっかく分厚い装甲板を装備するタイガーI型に隙間があっては意味がありませんからね。砲塔は当然、回転できます。また主砲も上下可動でき、自在なポーズ決めが可能です。細かい部分ですが、前面装甲の機銃が出ている部分の四角いくぼみの中、機銃の根元横には標的確認用の小さな穴があるのですが、このキットでは省略されていましたのでピンバイスで開けました。また、機銃の銃口も塞がっていたので同様に穴開けをしてあります。
エンジン通気孔の上を通るワイヤーロープ。これは4号駆逐戦車の時と同様に自作しました。タイガーI型の独特の取り付け方法に習って接着しましたが、左右対称に取り付けるのはけっこう苦労しました。また、砲塔の横にはクリーニングロッドがモールドで再現されていますが、その後ろに右側は消火器、左側はフックをそれぞれ他キットで余った部品を流用。少しでも細かいモールドをリアルに再現しようと取り付けました。塗装は全体を自動車用サフェーサー(白)で下塗りし、タミヤ製ジャーマングレーで塗装。艶消しと下地のザラザラ感が雰囲気を高めてくれています。各部に艶消し黒で墨入れと溶接部分を中心にフラットブラウン等でサビ、剥げを再現。その上から全体に汚しを施しています。主砲先端は例によってガン用塗料のブラックパーカーでスス汚れを再現してあります。
4号駆逐戦車との比較。やはりひと回り大きいですね。第2次大戦初期のドイツ軍戦車はとにかくこのジャーマングレーが似合います。タイガーIの場合、基本色がジャーマングレーからダークイエローに切り替えられる直前に登場しましたので初期のグレー色の車体は少ないと思いますが、なぜか私はこの色の方がしっくりときます。ハセガワ製1/72スケールのシリーズはとにかく組み立てやすいのと値段が安いのが良いところ。気軽にサクサク組み立てられます。私のように細かいところにこだわり、後期型のキットをあえて初期型に組み立てるようなマネをしなければ一段と早く完成することでしょう。初心者にもやさしいキットというのはとても重要な存在です。これからも生産し続けて欲しいシリーズです。
(2007.09.03)

赤い国の防人
たまには旧ソビエト車輌も。ミリタリーモデル、とくに陸モノをラインナップしている模型メーカーなら必ず1台はシリーズ中に存在しているものの、あまり注目を浴びることなくひっそりと販売され続けているのが旧ソビエト軍、ロシア軍系の車輌。そのソビエト軍の名車がこのT−34だ。第2次大戦前から投入され、大戦終了までフルに戦い抜いた車輌である。幾度もの改良が施され、無数のバリエーションが存在するこのT−34戦車だが、今回製作したのは初期の頃のモデルであるT−34/76だ。1941年に東部戦線で活躍した車輌である。この当時のT−34は主砲が細く短い、砲塔はモデル中もっとも小さく貧弱で、車体後方両脇に外部燃料タンクを装備しないモデルだ。こういう弱々しい車輌になぜか惹かれる。
キットはドラゴン製。かなり前に生産されたキットだ。最近のドラゴンキットのような緻密なモールドやエッチングパーツをふんだんに使う上級者向けキットとは違ってシンプルで少ない部品点数(それでもとても小さな部品や細すぎてちょっとの力が加わるだけて折れてしまうような部品はいくつか存在する)だ。最近のキットに慣れてしまうととてもそっけない印象だが、プラモデル本来の姿はこうあるべきだとあらためて実感できる。内容的にはそうした少ない部品の他、車体後部のエンジンの通気孔の部分のみエッチングパーツが付属する。また、最近のキットにあるDS覆帯(特殊なゴムで出来ていて接着や塗装が自在にできるキャタピラパーツ)ではなくごく普通のゴム製覆帯になっている。これならいくらドラゴン社製モデルといっても初心者でもなんとかなる雰囲気だ。付属のエッチングパーツは使わないで組み立てることも可能で、選んで組み立てることができる。
そのエッチングパーツを使って組み立てるとこうなる。車体後方の上面にある黒い網目部分がそれだ。ここがくり抜かれていてエッチングパーツを取り付けるようになっている部品とくり抜かれていないパーツがあるので選んで取り付けることになる。今回はエッチングパーツを取り付けた。シンプルな平面構成のT−34特有の後姿。左右2本出しのマフラーがカッコいい。中央のエンジン点検ハッチには赤★マークを貼ってみた。これがあるのと無いのとではやはりイメージがまったく違ってくる。共産主義国家の象徴である赤★マークはT−34には必需品だろう。さて、後方から見たこの画像でもっとも強く感じる違和感。それは図体のわりにあまりにも小さい砲塔だ。車体の前半分くらいに他の中戦車や軽戦車の砲塔をちょこんと乗せてあるだけのように見えるくらい小さい。これは年々改良されていくうちに徐々に大きくなっていくのだが、初期型のT−34では異様に見える程小さい。
前から見てもやはり砲塔だけがやたら小さい。シャーマン等と比べるとさほど変わらない大きさなのだが、上に行く程狭くなる台形型断面であることが小さく見せている要因だろう。車体前面は独軍のパンサー系に似たかなり傾斜した平面台形デザインで、被弾時の垂直被弾を防ぐ役割を果たしている。パンサー系程分厚くはないが・・・。ヘッドライトがこの前面装甲板に付くのも初期型の特徴。なかなか良い位置に付いていて可愛らしい表情になっている。このヘッドライトの間には機銃と操縦手用窓がある。細かな部品構成で再現されている部分だ。前面装甲板左上(画像では右上になる)にも赤★マークをあしらってみた。ダークグリーンに赤という組み合わせは現代でも共産主義国家によく見られる色合いだ。今回の製作では極力赤いデカールを使用して雰囲気を出すよう心がけてみた。また、例によって主砲先端は黒くススけた汚れを再現してある。
砲塔は回転する。今時のキットと違ってかなり隙間があり、取り付け後も揺らすとカタカタと音を立てて動いてしまう。ほとんど乗っているだけという感じだ。
さて、今回のこのドラゴン製T−34。今時のキットに比べればかなり初心者向きで大変よろしい。トランペッター社製のプラモデルに近い構成だ。ただ、これからこのキットを作ろうと思っているアナタに1つだけ警告しておく。このT−34の覆帯(キャタピラ)は説明書や現物のゴム部品にある「のりしろ」目一杯の寸法で接着すると車体に取り付ける際にキツすぎて付かなくなるので要注意。「のりしろ」先端ギリギリのところで接着して丁度良い長さになるので気をつけよう。私はおかげで左右前2輪、計4つの転輪を付け根からボキボキと吹っ飛ばしてしまった。今時のDSキャタピラが付属されているキットだとそんなことは無いと思うが。

英国の気品ある装甲車
数少ない国産1/72スケールプラモデル、ハセガワ製キットのダイムラーMk.Uです。これまでいくつかのハセガワ製1/72スケールキットを製作してきましたが、もっともよく出来たキットの1つだと思います。シャーシーの下回りやサスペンション、プロペラシャフトまでリアルに再現され、車輪は左右を金属棒で繋ぎ、回転できるようになっています。この下回りの再現の仕方が秀逸で、この全長5.5Cm程の小さな模型の中でデフォルメするところはして、しっかりと再現するべきところはちゃんと押さえてあり、さすがと唸ってしまいそうな出来栄えです。さらにそうしたリアルな再現をしていながら、実に簡単に組み立てることができ、1度でもプラモデルというものを作ったことのあるヒトなら必ず完成することができるでしょう。
車体は平面で構成され、フェンダーの丸みとの融合で実に愛くるしい姿。普通に街中を走っていても良いくらいのデザインです。キットにはオプション的な装備品がまったく付属されていませんので、これまで製作してきたキットの余り部品からいくつかの装備品を追加しました。最初の画像(上)では砲塔左後方にジェリカンを、砲塔上部には機銃を、右の画像では砲塔にアンテナ、車体後部に弾薬箱、右後輪前のフェンダー部に斧等が追加してあるのが確認できます。これでもかなり控えめな数です。こうした装甲車では通常、兵士たちの荷物や物資、補給の弾薬等いたるところに荷物をくくりつけ、車体の形状が確認できないくらいに満載されている写真ばかりが残されています。それを考えるとこの画像の状態ではほぼ「空荷」状態と言っても過言ではありません。ちなみに実車は全長3.96mだそうで(キットの説明書による)、長さで言えば1300〜1500CCクラスのコンパクトハッチバック車くらいです。ただ、幅は2.44mもあるそうで、大型のトラック並みです。なんともアンバランスな寸法です。
ヘッドライトはフェンダー最前部隅に取り付けられています。車幅灯も兼ねていたのでしょうか?それとは別に砲塔の主砲付け根部にもスポットライトが付いています。偵察任務を主目的とする装甲車ならではの装備です。スペアタイヤは車体左横っ腹にどっしりと取り付けられていて1つのアクセントになっています。独軍の装甲車でもこのような形状の車輌がたくさん見受けられます。当時のトレンドだったのでしょう。この車輌、偵察任務を主とするわりにはけっこう大きめの主砲が取り付けられています。上の項で紹介しているソビエトのT−34と大差ありません。それでいてダイムラー製6気筒エンジンを搭載して最高速度80km/hで走行可能というからけっこう戦力になる車輌だったのでしょう。当然4WDですから戦場でも軽快に動き回り、敵の標的にもならずに戦うことができたに違いありません。
この車輌の大きな特徴の1つにマフラーの位置があります。車体左後方のフェンダー前に四角い箱があり、その箱の下面から生えたマフラーは3回直角に曲がって左後輪の前を通り、上に向かって突き出しています。タイヤ交換作業時にはさぞかし邪魔だったことでしょう。これだけ大きなタイヤを誤ってマフラーにHITさせてしまえば間違い無く折れ曲がってしまいます。何か移動や回転させるようなしくみにでもなっていたのか・・・不思議です。エンジンは後方配置です。車体後部上面に点検用ハッチが左右にあるのが見えます。また、車高(最低地上高)が高いのでジャッキアップしなくても車体下部の点検、作業もできたのでしょう。こういう車輌は極限の状態で戦う戦場ではとても便利だったに違いありません。第2次大戦ではこうした4輪、6輪、8輪の装甲車輌が大変重宝されたそうです。なんだかその意味が解かるような気がします。
とても簡単で安く、気軽に作れるハセガワ製ダイムラーMk.U。これはかなりおすすめのキットです。部品の合いも良く、ストレートに組み立てれば難しい作業はまったくありません。塗装も単色で充分見栄えしますから缶スプレー塗料でさっと吹いて塗装できます。こういうキットはいつまでも販売し続けて欲しいものです。子供たちが簡単に作ることができ、それでいてしっかりと組みあがるプラモデルは単に「模型」「おもちゃ」というだけでなく「教材」としての意味も含まれます。そういう意味でもとても良く出来たキットだと思います。ところでジムニーのシャーシーを使ってこんなクルマが作れそうですね。実際にやることはありませんけど。
戦場の路線バス
トランペッター社製プラモデルはこれまでもいくつか紹介してきました。部品点数を押さえていながらリアルなモールドでなかなか良い製品を多数発売してくれています。そんな中から、現代もなお、現役で使用されているM113A1を紹介します。デビューはベトナム戦争だそうで、兵員輸送や救護車輌としての任務を目的として開発された車輌です。明らかに1BOXタイプの車体が「輸送」に特化した車輌であることを主張しています。しかし、バリエーションの中にはこのボディの上に回転砲塔を備えて、戦闘車輌としても充分に活躍できる車輌も存在しています。あらゆる用途に使われる車輌であることが解かります。それが長く現場で使用され続けている理由なのでしょう。
とにかく「箱」です。室内には兵員輸送車としての機能をしっかりと再現してあり、室内後部は左右に向かい合わせのベンチシートが取り付けられ、11人の兵員が座ることが出来ます。また、室内前方右角にはエンジンルームがあり、壁で仕切られています。これらの内部部品もしっかりと塗装をして万全の態勢で組み立てたにもかかわらず、完成してみるとどこのハッチも開閉不可能でまったくそれらが見えなくなってしまいました。中国語の説明書ゆえ図面ばかり見ているとこういう失敗が起こるのです。後部ハッチと上面前方の通気孔部品は開閉選択式で選んで組み立てるよう書かれていました。とくに上部の通気孔部は接着しないで乗せておくだけにしておけば内部も見せることができたのでした。しっかりと確認しなかった私がいけません・・・。時にはこんなこともあったりします。
操縦席は高い位置にあることが上部前方の丸いハッチで解かります。エンジンのすぐ横で操縦していることになります。前面装甲板は傾斜がつけられ、被弾時の損害を最小限にする効果があります。また、大きな追加装甲板が中央に設置され、エンジンの点検ハッチを開くにはこの装甲板を開いてからということになります。ヘッドライトも高い位置に左右2灯づつ装備されています。武装は上部にある機銃のみ。あくまで輸送が主任務です。工具類は上面後方に取り付けられ、シャベルだけは前面装甲板に取り付けられています。こうした箱型ボディでは装備品も取り付ける位置が限られてしまいます。効率よく必要な装備を配置するという難題をうまくクリアしていることが解かります。ちなみに室内にもさまざまな装備品が取り付けられていると思われますが、このキットでは省略されていました。
テールランプは第2次大戦当時に活躍したM4シャーマンからの伝統、「丸型上2/3が赤色灯」というもの。左右に付いています。後部ハッチはかなり分厚い装甲板で出来ていることがハッチ上端部を見るとよく解かります。乗員を守る米軍らしい考え方で作られています。その後部ハッチには牽引ロープがモールドで装備されています。しっかりと塗り分けてより立体感を高めてやりたいところです。上面の工具類も金属製のものと木製の部分との塗り分けをしっかりと行い、より立体感を高めます。テールランプの下にはジェリカンが左右ともに装備されています。さらにその下にはマッドガード(泥除け)がありますが、なぜかマッドガードの下の方には四角く穴が開いています。何か意味があるのでしょうが、どうもよく解かりません。泥除けの意味があまり無いような気もしますが・・・。
M113A1という車輌は意外と各メーカーから発売されている人気モデルのようです。天下のタミヤも1/35スケールで発売しています。純粋な戦車以外の車輌も人気のある車輌はけっこうあるものなんですね。トランペッターのこのキットは車体側面にある「BoozeHounds」の文字が気に入って購入しました。とても良いアクセントになっています。同社の1/72スケールのラインナップにはこの他に救護用車輌と上面に回転砲塔の付いた車輌の3タイプがあります。どれも捨てがたい魅力的な車輌だったのですが、とにかくこの側面のフレーズに惹かれてこの車輌を選んだのです。シリーズの中ではわりと新しい製品のようですが、相変わらず組み立てやすいすばらしいキットです。この調子でどんどん新製品を発売してもらいたいものです。
とうとうここまで・・・
数々の1/72スケールのキットを組み立てているとキットに付属しているパーツで使用しない部品が多々あります。これらを1つの箱にまとめてとっておきました。自分なりのディテールアップや破損した部品の代品としてこうした「余り部品」が活躍してくれます。そんな余り部品を眺めていて思いついたこと。「これだけあれば余り部品だけで1台作れてしまうんじゃねーの?」。で、右の画像です。シャーマンの部品が大量にあるのでシャーマンを作ることにしました。ボディ、シャーシーはプラ板で自作し、転輪、キャタピラ、砲塔等は余り部品を流用。その他の細かい部品も自作したり流用したり・・・。フルスクラッチとまではいきませんが、セミスクラッチとでも言いましょうか。そんなことをやってみました。画像のようにプラ板で箱のようにボディを組み立てていきますが、やはりキットとは違い、強度が無いのでプラ棒で接着面を裏から補強したりして強度を稼ぎます。砲塔は1つ余り部品があったのですが、その砲塔に取り付ける主砲の付け根の部品がまったく無かったので画像右側のような部品を自作し、取り付けることにしました。5mmのプラ棒から削り出しで製作した主砲基部とそのカバー(防盾)はプラ板を湾曲させて作りました。
ヘッドライトはドラゴン製からの流用品。前面装甲板に搭載される機銃は丸いプラ棒と真鍮棒で自作。その機銃の周りのモールドも薄く削り出したプラ板の破片を丸めて接着。意外と難易度の高い工作です。各パーツの取り付け位置にはあらかじめ採寸の上、穴あけをしておきます。左右のヘッドライトと左ヘッドライト横のスポットライトにはカバーが、ヘッドライト上の取っ手が付く位置もしっかり採寸して穴を開けておきます。前面装甲板の補強には画像のように側面の補強用に取り付けてある5mmプラ棒を前面装甲板の角度に合わせて削ってあり、側面と同時に前面の補強も兼ねるカタチにしてあります。1つの補強部品で上面まで含めて3枚の板を補強させて合理化を図っています。5mmのプラ棒は上面の砲塔が回転する際に邪魔にならない最大のサイズです。これ以上太くすると砲塔が回転できなくなってしまいます。
主砲の付け根部分の工作です。方法はいろいろ考えられますが、今回はとにかく「丈夫でしっかりと固定できること」を最優先に考え、可動(上下)はさせず、がっちりと固定させることにしました。まずは5mmプラ棒を採寸した長さにカットし、中央に○を描きます。その○の周りを丁寧に削り、およそ半分の厚さまで頑張ります。○を変形させないように慎重な作業が続きます。削り込みが終わったら○をしっかりとした円柱になるよう精密ヤスリで仕上げます。次に○の中に2mmの穴を開けます。これは貫通させず、取り付ける主砲の取り付け部に合わせた深さまでの穴にします。今回はトランペッター製の主砲部品を流用しますのでそのパーツに合ったサイズです。最後に角を落とし、防盾のアールに合わせて前面を丸めていきます。次に防盾の製作。これは採寸して切り出したプラ板に必要な穴を開け、ボールペン等の丸いもので湾曲させます。角や表面の仕上げは取り付け後に調整しながら行います。
シャーシー部分です。下面、側面のパネルを箱組みして中からプラ棒で補強。それにフロントのシャーマン独特の鋳造前面装甲板(ドラゴン製から流用)を取り付けます。リアも同様にドラゴン製から流用したパーツを取り付けます。起動輪、転輪、アイドラホイールもそっくり流用品。ここら辺のパーツはあと5〜6台は作れそうな勢いで大量に余りパーツがあります。どれを使おうか迷ってしまいます。取り付け位置に関しては完成したドラゴン製、トランペッター製等から採寸して最適な位置を決めてあります。最後尾のアイドラホイールは後面パネルと同じドラゴン製の流用品のパーツを使用して取り付けますが、そのままだと短いので他の転輪とツライチにならず、かなり引っ込んでしまいます。そこで2mmのプラ棒を使って新たに部品を追加してツライチになるように仕上げてあります。これですべてのホイールがツライチになり、キャタピラもしっかりと直線に取り付けられます。
そのアイドラホイールの付け根部がよく解かる画像です。強度が必要な部分ですので接着は強力に行わなければなりません。瞬間接着剤での接着としました。本来なら真鍮棒で芯を入れたいくらいの場所ですが、キャタピラ装着時にあまりムリすることなく装着できたのでこれで良しとします。次に車体底面のモールドを製作します。0.3mmと0.5mmのプラ板で凸モールドを作り、角を落として貼り付けていきます。丸いモールドはいくつかのサイズのプラ棒を使い、輪切りにしました。左右の転輪のサスペンション部の接着位置がしっかりと採寸されていないと左右をつなぐ細い直線の凸モールドが曲がったり斜めになったりしますので注意が必要です。あとはリアパネルに牽引フックやマフラー等の流用品を取り付けてシャーシー周りの工作はひとまず完成となります。キットであればこんな苦労はありませんが、これもスクラッチならではの作業と割り切って楽しんで行います。
そんなこんなで完成したセミスクラッチビルドのシャーマンがこちら。砲塔はドラゴン製からの流用で、車長用ハッチは流用パーツが無かったのでプラ板で自作。その左側の楕円形のハッチはトランペッター製からの流用、機銃と主砲もトランペッター製です。車体上面は簡単そうで実はけっこう難しい作業です。4枚の平面のパネルを製作し、それを貼り合せて構成しています。砲塔の付く一番大きな平面を基礎として後方左右の少し斜めに切り落とされたようなパネルと中央のパネルをそれぞれ合わせていきます。接合面は斜めに削り、多少力が加わっても中に落ちないように設計しました。さらに中からの補強も忘れてはいけません。一番苦労したのはそれらの後方のパネルとメインの前方のパネルとの境目です。ここはダイレクトに接着せず、砲塔の周囲を取り囲むように付いている凸モールドに合わせてプラ板を縦に立たせて接着。それに対して前後のパネルが接着されるように作りました。つまり、後方パネルと前方パネルの間には0.5mmの隙間を作り、そこに採寸したプラ板を差し込むという方法で製作してあります。
前面装甲板の取っ手は真鍮棒を折り曲げて製作し、突き刺して接着。後のテールランプはキットのランナーからの削り出しでランプの形状を再現。各部の工具類もプラ板とプラ棒で製作しました。とくにシャベルは先端の金属部をプラ板で削り出して別パーツとし、それに柄の部分を取り付けてあります。柄はY字型になっていてその裂けた間にグリップが付く構造です。最初から角度を付けて切り出せば簡単に作れますが、いまいちリアルさに欠けます。そこで細く四角い断面のプラ棒の後端を割り箸のように切り込み、その間にグリップになるパーツを押し込んで製作しました。おかげで実にシャープな工具に見えます。エンジンの通気孔はけがき針による描き込みで簡単に再現してあるだけ。その他の凸モールドはいろいろなパーツの製作時に出た削りカス等をうまく成型して取り付けてあります。
砲塔前の左右のハッチはトランペッター製。周りのモールドはパテを盛り付けて成型して作りました。砲塔の取り付けに関しては細心の注意を払い、ガタつかず、キツすぎない、中心もズレないように何度も採寸し、穴あけを行いました。強度の確保も裏にもう1枚プラ板を貼ることで行っています。おかげで取り付けた際には寸分の狂い無くニュッとハマり、回転もまるでポリキャップでも使用しているかのように節度ある手応えで回転します。ガタつきや中心のズレ等も無く、まるでキットを組み立てたかのようにしっかりと取り付けることができました。1/72スケールというとても小さな模型を1から設計して制作するのですから、ちょっとした採寸ミスが大きな欠陥に繋がります。コンマ何mmの狂いが後で発覚すると一気にすべてが狂ってきます。スクラッチビルドの怖いところです。この砲塔の取り付けでは今回たまたまウマくいきましたが、やはり寸法取りの正確さが重要だということがとても良く解かりました。
後の面にはシャーマンのお約束の荷物のラックが中央に取り付けてあります。これはドラゴン製からの流用。なんら問題無く付きました。その左右には弾薬箱を設置。これはトランペッター製。これらのパーツもたくさん余っていたのでやろうと思えばもっと装備品をベタベタ取り付けることもできました。が、今回はとにかくシンプルにしっかりとした工作を心がけて製作したのでプロポーションをしっかりと確認できるよう、余計な装備品は付けないことにしました。ちなみに砲塔の後ろ部分の上下パーツの合わせ面の接合部には微妙なズレや隙間が出来るのでパテで埋めて成型してあります。この部分はどのメーカーのモデルでも必ず出来てしまうウィークポイントで、これまで製作したシャーマン(1/72に限って)はすべてパテ埋めが必要でした。おそらく設計がもっとも難しい部分なのでしょう。
デカールは寄せ集めです。あらゆるメーカーのモノを良さそうなモノだけピックアップして貼り付けました。
こうしてセミスクラッチビルドのM4シャーマンは完成しました。他のシャーマンたちに混ざって展示してありますが、どれがこの1台かパッと見まったく解からないくらいに溶け込んでおります。やればできるものだと思い知らされました。しょっちゅうこんな面倒なモノを作ろうとは思いませんが、しばらくしてまた思い出したようにフッと製作するかもしれません。なんだか「10個買ったらもう1個付いてくる」的なお得感があります。余り部品って取っておくと良いこともあるものですね。
(2007.09.22)
8輪駆動のイモムシ
数少ない日本製1/72スケールモデルの代表格、ハセガワ製。その最新作がこのSd.Kfz.234シリーズだ。今回、製作したのはその中の234/2で、通称”プーマ”と呼ばれる車輌だ。最新作だけあって(とは言っても2004年のことだそうだ)海外製品の緻密なクオリティに迫るディテールが自慢だ。これだけリアルな製品でありながら、シリーズ他製品同様¥840−(税込み)という定価は大変お買い得である。かなり古い設計のモデルでも同じ値段の製品も多くあるだけに、この234系モデルだけはもっと高くても良いくらいの製品だ。実車は重装甲車Sd.Kfz.231の活躍により、さらに進化した装甲車を開発せよという指令により誕生した車輌です。この234/2は1943年に登場し、ヨーロッパ戦線に投入されたそうです。戦車と同等の高威力の主砲を装備し、最高速度は80Km/hと俊足な為、戦場では大変重宝されたそうです。主な任務は偵察ですが、総力戦においては戦車や突撃砲に混ざって活躍したそうです。
そんなプーマを作ってみたいというのは以前から思っていたことで、やはりタイヤ付きの車輌を好む私にとってまさに必然だったのかもしれません。キットの内容としては同シリーズの中ではかなり部品点数が多く、細かい部品も多々ありますが、近年の設計だけにピタリと合い、しっかりと組み立てられます。さらにその1つ1つの部品のモールドはとてもリアルで、ドラゴン社製品を輸入、販売するハセガワだけにかなり影響を受けているように感じます。が、極限までリアルさにこだわるドラゴン社とは違い、「作りやすさ」の部分を決して切り捨てないあたりがさすがハセガワというところ。飛行機のプラモデルで培った高いクオリティとドラゴン社のとことんリアル路線との絶妙な融合といった感じです。車内や下周りもしっかりと再現されており、こだわり派の方にも充分アピールできる製品です。
組み立ては非常にスムーズに進みます。とくに難しいところは無く、サクサクと組み立てられます。下周りもモノコック構造をしっかりと再現してあり、さらに8輪独立懸架のサスペンションやドライブシャフト、ステアリング系のロッドまでちゃんとあります。タイヤとホイールは別部品で構成され、ホイールは裏と表からタイヤを挟み込む構造になっています。そのホイール裏面のサスペンションとの取り付け部はタイヤの向きを自由に決められる作りになっていて、ステアリングを切った状態にも組み立てられます。ただ、8輪操舵ですから、それぞれの向きをしっかりと合わせないとおかしなことになりかねません。その辺に自信が無いヒトは素直に直進状態で組み立てるのが良いでしょう。ちなみに前から3つ目のタイヤだけはパターンが違います。これも実車同様に再現されているのでしょう。箱絵ではすべて同じパターンに描かれていますが・・・。
装甲車の中ではかなり大型な車輌です。同スケールのシャーマンと比べてもほぼ同じ全長です。ボディはこの当時の装甲車全般に共通した複雑な平面の組み合わせで構成され、そのボディに左右の長いフェンダーが付いています。そのフェンダー最後部にはかまぼこ型のマフラーが左右ともに装備され、その間にスペアタイヤを背負うカタチになっています。当時の装甲車では意外と珍しい背面タイヤ車です。ほとんどの装甲車は横っ腹かフロントにスペアタイヤを装備していました。ここがプーマをカッコよく見せているポイントかもしれません。フェンダー前部にはジェリカンが装備されています。左右2個づつ計4個ものジェリカンが乗っています。燃料等入れていて攻撃を喰らったらどうなることでしょう。だからなのかは知りませんが、消火器も左右各1個づつ装備されています。1台の車輌に複数の消火器が装備されていることはけっこう少ないのです。
勇ましいフロントマスク。うつむき加減の顔つきがプーマの名によく馴染みます。フロントにはパイプ状のバンパーがあります。砲塔は小さめですが、その小さな砲塔から生える巨根(もとい)巨砲がなんとも強力です。このあたりが234/2型の特徴です。しかし、こうしてタイヤが見えないアングルから見ると戦車となんら変わらない姿です。ちなみにこの車輌の砲塔には煙幕発射管まで装備されています。砲塔左右側面に3本づつの筒があります。これが煙幕発射管です。撃つだけ撃って煙幕で目をくらまして80km/hの快速で逃げ去るというズルがしっこさこの上ない車輌ですね。それゆえドイツ軍では重宝されたのでしょう。これだけ贅沢な装備を纏った車輌が「装甲偵察車」なのですから使い方もとても贅沢です。なんともいやらしい車輌です。あくまで私の想像で言ってますが・・・。
車幅灯のポールが片方ありません!塗装中に折ってしまいました。どこに行ったか解かりません・・・。そのうち自作で復活させましょう。車体後半はやたら長く見えます。エンジンもV型12気筒のディーゼルエンジンということでこれだけのスペースが必要なんですね。さらにトランスミッションも8輪に駆動力を伝える大きなものですからなおさらです。しかし、そんな巨大なエンジンでありながら航続距離は1000kmにも達したそうです。どれだけデカい燃料タンクなのでしょう。それもこの後半分に押し込まれているのでしょう。そりゃあボディは長くなる訳ですね。さて、今回の塗装はダークイエローをベースにダークグリーンとブラウンが細々と散りばめられた3色迷彩塗装です。説明書の解説では工場から出荷される時にはすでにこの迷彩が施されていたそうなので、バリエーションはそんなに無いということになります。
いかがでしょうか。戦車には無い独特の魅力を感じ取っていただけたでしょうか?このクオリティが¥840−で手に入るのです。ハセガワってすごいメーカーですね。倍の値段でももっと低いレベルのキットはたくさんあります。そう考えるとさらにお買い得感が増してきます。ハセガワ製1/72スケールシリーズ(飛行機を除く)では新旧さまざまな製品がラインナップされています。古い設計のキットではクオリティが現代のレベルではなかったり、パーツの合いも悪かったりしますが、最近の設計のキットはすばらしいプロポーションとリアルなモールドで進化していることがしっかりと理解できるキットになっています。上で紹介したタイガーTの頃とは明らかに設計が違います。Sd.Kfz.234/2プーマはこのシリーズ中もっともおすすめのキットです。
(2007.10.03)
ズラリ並んだ1/72スケール戦車たち。右半分はシャーマンが占めています。ハセガワ製のM3 りー(右下)からトランペッター製M4A3HVSS(左上)ベトナム戦争時まですべてが違うバリエーションです。9台のシャーマン(M3 リーも含んでます)系の中に今回製作したセミスクラッチの1台が混ざっています。右上の1台がそれです。違和感がありません。また、左半分にはその他の車輌が納まっています。上左からM113A1、ダイムラーMk.U、T−34。下の段はドイツ軍で、左からハセガワ製タイガーT(後期型を初期型に改造)、ハセガワ製4号L/48、ドラゴン製4号L/48。まだ何台かは収められますのでこれから徐々に埋まっていくことでしょう。そしてこのケースの上に鎮座するのはタミヤ製1/48U.S.カーゴトラック(右)と同社製1/35大日本帝国陸軍九七式中戦車改”チハ”。チハは”改”の限定生産モデルです。
さて、この空きスペースには何が並ぶのでしょう・・・。気まぐれな私のチョイスで決まります。私自身も予測できません。
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