FineMolds 1/35 大日本帝国陸軍
九四式軽装甲車 TK
第2次大戦までの日本の戦車は他国の戦車に比べるととても味がある(古めかしいとか”ボロい”とも言います)車輌ばかりです。昭和初期(ヒトケタくらいの頃)は当時の最新兵器だったとしても、第2次大戦に入ってからは明らかに時代遅れの車輌ばかりでした。島国ゆえ陸戦の経験は限られた場所での経験しかなかったので戦車を軽視していたことが要因です。それまでの陸戦は大半が戦闘というより弱国に対しての侵略であり、分厚い装甲を持つ重戦車等は不用でした。むしろ、補給や牽引等の細かな雑務も可能な軽装甲車(俗に言う豆戦車)のような小型で機動力に優れた車輌が重宝されていました。中国でのさまざまな紛争においてこれらの豆戦車は侵攻する帝国陸軍に多大な貢献をしていました。満州、上海、ノモンハン等の事変でも軽装甲車は大いに活躍しました。

今回製作した九四式軽装甲車”TK”もそんな時代に誕生し、小柄な車体を活かしてさまざまな戦闘シーンで活躍しました。1937年に勃発した日華事変において、南京の光華門を多数のTKで攻撃するシーンを収めた写真が残っており、有名な1枚となっています。時にはしっかりと戦闘能力を持っていることも示すような戦歴も残っているという証しになっています。さて、このTKですが、「偵察」と「牽引」の頭をとって「TK」と名付けられています。したがって、回転砲塔は装備していますが、戦車砲ではなく車載機銃のみが装備されています。開発時には戦闘力もある程度有しているべきということで装備されています。英国ビッカーズ社製カーデンロイド豆戦車をもとに開発されたというこのTK。当時、陸軍では戦車は三菱が作るというのが慣例だったようですが、このTKは東京瓦斯電気という会社が生産したそうです。後に会社は分割、統合を幾度か経験し、現在の日野自動車になっています。

さて、キットを見ていきます。大きな箱には現物のイメージをはるかに超える迫力あるイラストが描かれています。とても強そうにどっしりと構えたTKですが、現物は現代の軽自動車サイズのとても小さな戦車であることを忘れてはいけません。実際、その箱を開けるとこんなに大きな箱の中にわずか8〜9Cm程のシャーシーパーツと箱の半分くらいのサイズのランナーが数枚。スッカスカです。説明書はコピー(!)。その他に実車解説と塗装解説が記載された解説書が1枚同梱されています。明らかにこの半分のサイズの箱で充分な内容量ですが、同シリーズ他製品と同じ棚に陳列できるよう大きな箱になっているのでしょう。また、豊富なバリエーションが選べるよう数種類のデカール、マフラーの遮熱板をはじめとするボディ各部に使用するエッチングパーツも付属します。キャタピラはゴムのようなビニールのような素材のベルト式ですが、プラモデル用の接着剤で接着可能なうえ、プラカラーによる塗装もできる特殊な素材だそうです。

組み立て〜塗装は難易度で言うと少々高め。中級者〜上級者向けの製品です。肉厚が極度に薄い部分や部品があったり、細かい部品も多いのはもちろん、組み立てと塗装のタイミングも間違えると後で後悔することになるヶ所が多数あります。「ここまで組み立てたら全体の塗装をし、その後この部品を取り付ける」とか「車体と同時に塗装した後に1度取り外して他の部品を組み付け、ふたたび接着する」などといった順序を自分の頭の中で構築して組み立てなければなりません。また、塗装も迷彩塗装ですが、実車は各色ともハケ塗りで再現されていたそうで、吹き付け塗装ではリアルに再現できません。地道に筆塗りで仕上げていくことになります。今回、独自のディテールアップは右画像にあるリアバンパーに巻きつけたロープと車体右側面に突き刺さっている日本国旗。ロープは他(確かタミヤのどれか)キットに付属していたナイロン製のひもを塗装して巻き付けてあります。国旗は真鍮棒にティッシュを艶消しクリアで固めたものをカットして赤丸を描き、接着しました。垂れ下がる旗をそれらしくしわを付けて再現しています。また、中国大陸の砂ぼこりで黒ずんだ感じにするために汚してあります。

迷彩は濃いめの茶色を全体に吹き付け、これを基本とし、零戦等に使う暗緑色、オリーブドラブ系、黄土色等で再現し、最後に帝国陸軍戦車の特徴である黄色のラインを描いていきます。工具やジャッキ等はカーキ色、シャベル等の柄は木製だったので木の雰囲気を再現します。また、フロントにある★エンブレムはゴールドで帝国らしさをアピール。小さくても雰囲気はバツグンです。基本塗装が完了した状態だととてもにぎやかな色合いになりますが、艶消しクリアを吹き付け、各種の汚しを施していくことで全体が暗く落ち着いてきます。とくに特徴的な黄色のラインは明るさが際立ちますので周囲をキツめに汚すことで全体に馴染んでいきます。他にもフェンダー後部に泥よけを付けたり、後部ハッチ右にあるクランキング棒の代わりに消火器が付いている車輌もあったようですので、そうしたディテールアップもアリではないかと思います。

前から。向かって右側(車体左側)にエンジンが搭載されます。直列4気筒のガソリンエンジンだったそうです。ボディ形状や搭載位置から想像すると縦置きでボンネット(画像の出っ張った大きなハッチ)から点検するにしてもエンジンの前半分くらいしか見えなかったことでしょう。現存する当時の写真を見てみると、けっこう走行不能な状態や、大破している状態が多いのですが何か関係がありそうな気がします。有名な写真で米軍のM4シャーマンの背中にこのTKが横向きに乗せられている状態の写真があります。大きさの比較は当然ですが、M4とTKの強さの差、ひいては米国と日本の国力の差すら感じられる写真です。ちなみにこのM4に積載されたTKも砲塔が外れかかった大破状態の車輌です。こんな豆戦車を回収してどうするというのでしょう?大柄なアメリカ人が乗り込めるような車輌ではないので★マークを付けて捕獲車輌として運用するとは思えません。

マフラー部分。遮熱板の金網部がエッチングパーツです。曲げる際の治具も付属していますので湾曲の度合はしっかりと合わせることが簡単にできます。ボディと同様の迷彩で塗装します。熱を持つ場所だということでサビの表現をしてみました。また、今回製作した車輌は前述の日華事変の際の光華門攻撃時の写真に写っていた1台をモデルに製作しました。現存するTKの画像でもっともTKが強そうに見える写真だと思います。そんな中から1台選び(写真には十数台のTKが写っている)、製作しました。旗もその車輌に取り付けられていたので同様に製作しました。当然、白黒写真ですので色合いもまったく判別できませんし、当時の写真ですから鮮明ではありません。細かな部分にはもっといろいろなディテールアップが必要なのかもしれません。とりあえずあの写真から解かる範囲での再現となりました。ちなみにマフラーと砲塔の間にあるハナクソのような小さな部品は燃料コックです。

ファインモールド製九四式軽装甲車”TK”。完成時の全長わずか9Cm程という小さなモデルですが、凝縮された当時の悲しい日本の姿が垣間見れます。同社ではこうした大日本帝国陸軍の戦車のモデルが多数発売されています。この辺りの歴史に興味のある方や、旧日本軍車輌が好きな方にはとても良いシリーズです。ただ、組み立ての工作技術はそれなりに高いレベルが要求されますのでご注意されたし。よりリアルに雰囲気を再現したい方は戦車兵のセットも同時に製作すると良いかもしれませんね。私はとくに帝国陸軍車輌が好きな訳ではなく、「小さい車輌」が好きなのでTKを選びました。

(2008.01.16)