「小粒でピリリと辛い」こんな代名詞がぴったりな拳銃。アメリカでは最もよく使われている拳銃と言っても過言ではないスミス・アンド・ウエッソン社のM36 チーフズ・スペシャル(以降チーフ)。1部の日本の警察でも使用されているという。確実な作動とコンパクトで携帯性に優れていることからもその理由が窺い知ることができる。.38スペシャル弾を5発装填できるリボルバーで、これまで日本の警察で使用されてきた「ニューナンブ」の開発の元になった銃としても有名である。現在では徐々にではあるがこのチーフの発展型であるM37エアーウエイトに切り替わりつつあるようだ。
さて、タナカ社製チーフ。今回紹介するのはBoss所有の2インチバージョン。アウターバレル、フレームはABS製だが、フレーム右側のカバーが金属製である為になかなかの重量だ。当然、ハンマー、トリガー、シリンダー外周りも金属製だ。しかし、それよりも特筆すべきはこのミッドナイトブルーの仕上げだ。ABS製のフレームやアウターバレルでありながら、よくもまぁこのクオリティになるものだと感心する。秀逸な仕上がりだ。ヘビーウエイトや金属ではないので塗装で表現されているのだが、その塗装の技術は相当なハイレベルであり、同様の表面の輝きを一般人が再現するのはかなり難しい。青黒く光る艶やかな表面は深みのある光沢と磨き込まれた滑らかさが貴金属のようにすら感じさせる。
グリップは購入時はプラ製で木目を表現した塗装を施したグリップが付いてくる。これも他社のプラ製グリップに比べれば充分に鑑賞に耐えるが、私の所有するチーフはタナカ社純正オプションの木製グリップに交換している。プラ製グリップに表現されていたチェッカリングはこの木製グリップには無い。とくに滑り止め加工の類は無く、手触りもツルツルでメダリオンだけが唯一のアクセントだ。そんなグリップだが、握ってみると意外と滑らない。チーフのカタチがそうなのか、木の材質のせいなのか、表面処理が原因なのか定かではないが、瞬時に掴み、構えてもしっかり決まる。さすが純正と唸ってしまった。純正以外にもさまざまなグリップは発売されている。輸入された実銃用まで安価で売られている。材質も木を始め、ラバーやパール(実際にはプラ製)とユーザーも選ぶ余地は多分にある。好みのグリップに交換すると良いだろう。ちなみに現在、アメリカのS&W社から発売されている実銃チーフのシリーズではほとんどがラバー製グリップが装備され、ステンレスモデルのM60系等の1部で木製グリップが装備されている。
ハンマーは金属製だが、これまで数年間使用してきた間に1度交換している。根元から折れてしまったのだ。交換の際、バラしてみるとよく解かるが、その形状は折れるカタチになっている。強度の高い素材でできていれば良いのだが、ダイキャスト製であるために長年の使用には耐えられない。これはトリガーも同様と思われることなので、いずれはトリガーでも同じように折れ、交換するという作業をしなければならないということだろう。さらにハンマーを起こした時やダブルアクションでトリガーを引いた時等、シリンダーが回転する際、その回転を行う部品「ハンド」というパーツがモロい。長年使用していると、シリンダーの回転時、ラチェット部が最後まで「カチッ」と回り切らず、シリンダーが中途半端な位置で止まってしまうことがある。その症状は徐々に悪化し、最後はシリンダーの回転が終わった後、手で「カチッ」というところまで回してやらないと正規の位置まで回転しきらなくなる。1発撃つ度に手でシリンダーを回してやるのは面倒な上に実にカッコ悪い。これは先程述べた「ハンド」という部品の先端が磨耗してくることで発生する現象である。これも比較的強度不足な感がある。このようにタナカ社製チーフにはいくつかの「克服しなければならない弱点」がある。強化部品が出てくれていればぜひともそちらを選びたいところだが、残念ながらそういう対策品が発売されているという情報は届いていない。
リボルバーには革製ホルスターと昔から決まっている(笑)。とくにチーフのように小型のリボルバーは革製ホルスターに収まっていることが大変多い。現在、販売されているホルスターのほとんどは革製かナイロン製。ナイロン製は現代の銃、それもオートマチックピストルによく合う。革製の場合は昔から愛され続けているような伝統ある銃やリボルバーによく合う。チーフも例に漏れず革製ホルスターに収まっている姿が自然だ。木製グリップに交換した銃にはさらに革製ホルスターが似合う。天然素材には天然素材が合うということだ。写真のように完全に天然素材で覆われたタナカ製チーフは実銃にまったく見劣りすることなく堂々たる姿だ。リアルな製品を作り出すタナカ社製品の最上級の着こなしである。このホルスターはS.A.A.のページでも紹介しているイーストA社の製品だ。縫製もしっかりしており、裁断面の処理もキチンとしており、丈夫で長持ちだ。使い込んで革が柔らかくなってもその使用感がますます良い風合いを醸し出し、それでいて縫い目が解けたり裁断面がほつれてきたりといった見苦しい劣化は無い。革の特製を知り尽くしたメーカーの製品であることがそういうところから覗える。
実射性能は正直言って誉められたものではない。まっすぐ前に飛ぶだけで「当たり個体」と言えるだろう。固定HOPのこのチーフは調整ができないのでどうにもならない。まったくHOPがかからなかったり、そうかと思えば次弾は強烈なHOPがかかって大ホームランだったり・・・。シリンダーの回転がしっかりしなくなってくるとそれに加えて左右にも大きく曲がりだす。こうなるともう、5mくらいの距離でさえ上下左右どこに飛んで行くか解からないほどのバラけ様だ。まして、20m先の的缶を狙う等、無謀極まりない。ゲームでの使用を考えるなら、手段はただ1つ。フリーズコール時に使用するのみだ。バレルの短さが最大の原因だが、それだけではない。比較的バレルの長い同社製M19やパイソン等と同様のHOPパッキンを使用し、ガス圧はそれらより弱い。ということはHOPが元々強すぎる設定なのだ。追い討ちをかけるようにバレル長は41mmしかなく、安定した「助走」が得られていないのが現実だ。社外製の精密バレルに交換すれば多少は克服できるのかと組んでみたものの、効果はまったく無し。アングス製の精密インナーバレルを組み込んだのだが、その前後での変化はまったく確認できなかった。やはり短銃身な鉄砲はエアガンとしての実射性能を求めることは物理的に不可能なのだろうか・・・。メンテナンスも定期的にしっかりし、ゴム類の劣化や硬直を防ぐ意味でも定期的に撃っている。それでもこの有様なのだから。
私はこのチーフに対しては「モデルガンのクオリティで弾を撃てるエアガン」という見方をしている。それ以上のことをこのチーフには求めないことにしている。確かにそれ以上のことができれば嬉しい限りだが、原型を崩さずにそれをやるのは不可能だ。ヘタなモデルガンより秀逸な外観を持つタナカ チーフズ・スペシャル ミッドナイト・ブルー。そのリアルな質感と美しさが堪能できることで充分に満足できる。大事にしていきたい1挺だ。
※参考までにさいとうたかお氏の名作「ゴルゴ13」において主人公デューク東郷が使用している拳銃がこのチーフズ・スペシャル2インチである。彼はこの短銃身のチーフで数々の超人的射撃を成功させてきた。「おぉ、なんという男だ、ゴルゴ13・・・。」
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