LS Smith & Wesson M586
2.5inch KIT (Air)
かつて、プラモデルが子供たちの宝物だった時代、多くのプラモデルメーカーが存在していました。「ガンプラ」世代の人間であれば、多かれ少なかれプラモデルを作って遊んだものですね。今回のネタ銃、S&W M586 2.5インチはLS(エルエス)という今は亡きプラモデルメーカーの組み立てキットのエアコッキングガンです。1980年代当時、LSはさまざまなプラモデルを発売し、他メーカーと肩を並べるプラモデルメーカーでした。東京マルイの「造るモデルガン」がよく売れていた全盛期、LSも流れに乗るべくこのシリーズを発売したのです。「1/1 SCALE AIR REVOLVER SERIES」として発売された同シリーズはキットの形態、構成等、明らかに東京マルイ社の「造るモデルガン」シリーズを意識しており、「向こうがモデルガンならこっちは弾を飛ばせて遊べるエアガンで行こう!!」という戦略が容易に見て取れます。「造るモデルガン」シリーズがウエイトやカートリッジ以外、ほとんどABS樹脂製だったのに対し、LSの同シリーズではハンマー、トリガーまでもが金属(ダイキャスト)製でした。値段も両者ほぼ同価格帯で、まさに凌ぎを削っていたものと思われます。

そんなLS製組み立てキットエアガンの中から今回取り上げるのはスミス&ウエッソン M586 2.5インチです。実銃では「世界でもっとも普及したマグナム弾の銃」ということが言われています。そのもっとも短いバレル長の2.5インチモデルはズングリとした印象の外観で、意外と大きくその内に秘めた強力なパワーをしっかり表現している銃です。入手はいつものケイ・ホビー。仲間うちでゾロゾロと訪れた際、店長くんが私の為に取っておいてくれた素敵な商品でした。店長くんは「待ってました!!」とばかりに得意げに私に差出し、誘惑します。聞けば倉庫の大掃除をしていて見つけたシロモノで、箱はボロボロながら、中身は未組み立てのほぼ新品状態。M586だけに586円で良いということで、即決で購入した。早速次の日から製作を開始したのである。箱を開けてみて、「造るモデルガン」と非常によく似たパッケージングであることは一目瞭然で、フレーム、シリンダー、左側グリップとバレルが未組み立て状態で針金で固定され、まさに「造るモデルガン」と同様の景色を作り出している。その下にはランナーにくっ付いた各パーツやスプリング類、ネジ、金属パーツがそれぞれビニール袋でまとめられている。

まずは接着部品から組んでいく。今回のこのキットでは接着剤は本来不要だ。パチンとはめ込むだけで固定できる。ここは「造るモデルガン」と決定的に違うところだ。しかし、私は塗装をし、美しく仕上げたいのでしっかりと接着する。ABS専用接着剤を塗り、左右のバレルを合わせて圧着する。この中には実は秘密が隠されている。本来、キットのまま組み立てるのであれば、プラ製インナーバレルを組み立て、中に埋め込むのだが、今回、私は東京マルイ製ガスブローバックガンのグロック26の純正インナーバレルを組み込んだ。真鍮でできた、とても精度の高いインナーバレルだ。これを適当な長さに切断し、断面を処理した後、太さの調整をして組み込んだ。その状態で接着、固定したのである。どの程度の効果があるかは解からないが、これだけで何か、格段に信頼感が増したような気になる。HOPUPも組み込もうかとも思ったのだが、接着によって仕上げる為、後から調整はできない。したがって、今回はHOPUP無しで組むことにした。

フレームはヒケだらけだ。ヒケというより「陥没」だ。平面などあったものではない。このあたりはさすがに東京マルイ社のクオリティにはかなわないところか。しかも修正できるレベルではない。ヨークの上、バレルの付け根部分等は原型を留めていないくらい変形してしまっている。パテ埋めで処理することも考えたが、組み立て自体の精度がどの程度であるかも解からないので、ヘタにパテを盛ってねじやピンを止める際に割れや剥がれが発生しても悲しいのでそのまま組む。結果的にこれが正解であったが、これは後述する。画像でも解かるが、トリガーは金属製だ。これは最初にブルーイング処理を施して透き通った黒を再現した。ハンマーも同様の処理をした。フレーム本体の塗装には長期在庫になりつつあるキャロムのブルースチールを使用。この塗料はあまりにも青々と仕上がるので敬遠していたのだ。ただ、このまま使わないで置いておくのはもったいないという理由で今回使った訳だが、案の定真っ青に仕上がった。ブルーイングを施した雰囲気とかいう問題ではなく、明らかに青い塗料を塗りました、という仕上がりになる。1挺くらいこんな色の銃があっても他との比較にもなるしいいかということで・・・。

シリンダーラッチやリアサイト、エジェクターロッド等はお得意のブラックスチール。トリガーやハンマーとの色合わせを目的として選んだ色だ。幸い、大きな差はなく、かなり近い色合いに仕上げることができた。しかし、コッキング式だけにハンマーの作動は非常に重い。クラウンモデル製M29のページでも書いたが、ハンマーを両手の親指で引かないとスムーズに引けない程の重さである。このコッキングシステムはそのクラウンモデル社製エアコッキングリボルバーシリーズと非常に酷似している。おそらくLS製が最初に造ったのだろうが、あまりにも似ていてびっくりした。ただ、LS製の場合、ハンマーは金属製だけにボキッといくことは無さそうだ。ある意味安心してコッキングできる。フィンガーチャンネルの付いたグリップ形状も相まってさらに引きやすさが増しているのかもしれない。なお、トリガー、ハンマーと連動するシリンダーの回転だが、勢い良くハンマーを起こすとシリンダーがクルッと勢い良く回転し、1〜2発飛び越えてしまう。回りすぎだ。これは常時起こる現象で、この銃の泣き所のようだ。ゆっくりとコッキングすれば問題無い。

グリップは当然プラ製。ただ、質感は決して悪くなかった。これは「造るモデルガン」の上を行っているように思う。艶を抑えた感じの仕上がりで、色も薄めで自然に木っぽい雰囲気だった。そのままでも良いかとも思ったのだが、一応いつものようにニス塗り風に仕上げてみた。結果、さらに質感は向上し、本当に木製グリップのような風合いが生まれた。握った感じもとても良好だ。太めのグリップながら、フィンガーチャンネルと非常に細かいチェッカリングのお陰でしっかりグリップできる。この握り心地はこれまでイジってきたカスタムガンの中でもかなり上位に入る程の握りやすさだ。なお、グリップ右半分はコッキングのプッシュロッドの固定の役目も担っている為、変則的な取り付け方になっている。左半分を取り付ける前に合計3本のねじで右半分を固定した後に左半分を取り付ける。この辺りもクラウンモデル製とよく似た固定方法だ。

箱の写真と比べていただきたい。この写真ではグリップ、トリガー、ハンマーは未塗装だが、その他の部分は塗装されている。フロントサイトの赤もモールドで再現されているだけで、自分で塗装することになる。10歳以上用のトイガンなので、あまりディテールにこだわるユーザーもいないのかもしれないが、私のように珍銃やネタ銃をこよなく愛好する者にとってはこういう製品こそリアルに仕上げたいものだ。とくに私はコレクターではなく、モデラーやガンスミスという分野に入るタイプの人間だ。コレクションとして未組み立て状態でとっておくことに何も魅力を感じない。トイガンは組み立てて、いじって、遊んでなんぼだと考えている。したがって、古い貴重なモデルであろうとためらい無く組み立てるし、いじって遊ぶ。だからこのM586も組み立てキットであることがなによりも魅力だったのだ。正直、これを購入するまで、M586は私の好きなS&W製の銃でありながら、あまり好きではなかった。どうも不恰好に見えてならなかったのだ。しかし、こうして組み立ててみると意外と好きになってくるものである。

話しは戻って、カートリッジだ。カートリッジはプラ製でランナーにくっ付いた状態で梱包されている。1つ1つ切り離して整形し、弾頭部を塗装する。尻部にはゴムパッキンを挿入し、完成する。BB弾は尻部のゴムパッキンで保持し、圧縮エアで飛ばすことになる。この辺りもクラウンモデル製と同じ構造だ。プラ製で軽いながらもカートリッジをシリンダーに込める動作ができるのは嬉しい。リボルバーの醍醐味であるこの動作はやはり重要だ。シリンダーにも何ら抵抗なくスッと収まる。”お安いプラモデル”ガンにしては絶妙なクリアランスだ。無謀極まりないが、予備カートリッジがどこかで入手できないものかと考えてしまう。もしかしたらクラウンモデル製の.357マグナム系カートリッジがまったく同じだったりして・・・。ちなみに試射用にわずかだがBB弾が付属しているが、これがなんとも薄気味悪い。黒いBB弾で、バリやズレがあり、精度が実に悪い。とても使えない。現代の高い精度のBB弾を使用したい。

さて、こうして組み立てたLS製M586。スナブノーズと呼ばれる短いバレルのモデルだが、これはこれで独特の味があるように感じた。普通に4インチや6インチだったら私はM19やM29といったスマートな銃の方が好みだし、これほど力を入れて仕上げる気も起きなかったかもしれない。2.5インチという不恰好な銃だからこそその良さを自ら認識するべく力をいれていたのだろう。出来上がってみると、やはりいつものように愛着が湧き、こんな銃もアリなんだとあらためて認識させられた。やはり「食わず嫌い」は良くないということをしっかりと勉強させられた気分だ。今後は滅多にお目にかかることは無いであろうLS製組み立てキットエアガン。もし、また入手した場合には今回同様、楽しんで作ってみたい。他にどんな種類があったのかもとても気になる。もし、また入手することがあればまたしっかりと組み上げてみたいと思う、そんなキットでした。

(2006.12.21)