Academy SIG P230
日本の警察でも採用されている小型拳銃であるドイツ SIG/SAUER社製P230。日本で採用されているものは特注でP230JPと呼ばれている。今回紹介するモデルは韓国の模型メーカーアカデミー社製エアコッキングガンのP230だ。日本で採用されているモデルではなく、スタンダードなタイプをモデルアップしたものだ。日本では唯一、KSC社からガスブローバックガンが発売されており、P230、P230SL(ステンレスシルバー)、P230JPと後継モデルのP232、P232SL等がラインナップされている。これらのモデルはKSC社ブランドのガスブローバックガン第1号モデルとして発売され、現在でも人気の機種である。私もKSC社製P230JPを所有しており、その高いクオリティと精度から手放せない1挺となっている。NC加工による造型は本物の金属製かと思うくらいの質感で、他の追随を許さない仕上がりである。すでに入手して5〜6年は経過しているが、1度トラブっただけで修理後は実に快調に作動し、遊んでいてとても心地よい1挺である。

さて、今回のP230はKSC社製ではなく韓国アカデミー社製である。例によって「か」氏が所有するエアコッキングガンだ。「か」からの塗装依頼は多く、仕上がったら次というようにぞくぞくと依頼が来る。そんな中の1挺で、今回は色や仕上げ方等の一切を「お任せ」でという依頼であった。つまり、私が理想とするP230の姿を存分に再現できるのだ。我が物のように構想を練り、イメージを描いていく。今回のコンセプトは「実銃の新品当時のきめ細かな美しさ」で行くことにする。私はこれまで何挺ものエアガン、モデルガンをカスタムしてきたが、ほぼすべて「使用感」や「戦場を戦い抜いてきた」というようなリアルさを求めてきた。たまには工場で生産され、ディーラーに出荷された状態を再現してみるのも良い勉強になるかと思い、このコンセプトをチョイスしたのだ。「か」が気に入ってくれるかはともかく、いつもと違った仕上がりをご覧に入れたいと思っている。

今回の素材であるアカデミー社製P230は定価¥1200−程の非常に安いコッキングガンであるがゆえに軽くて仕上がりも「いかにもプラッチック!!」という状態のガンだ。これをどこまでリアルに仕上げられるか、腕の見せ所である。まずはグリップから見ていこう。グリップはフレームやスライドと同色のABS素材で未塗装のままだ。裏側には十字に骨があり、強度を保っている。そこに釣りで使う鉛のおもりを詰めて可能な限り重くすることにした。釣具店ではさまざまな大きさ、重さのおもりがあり、中でも仁丹のような粒状のおもりも多数ある。これを大量に埋め込み、重量アップを図ろうという考えだ。このおもりはなんと「ガン玉」というらしく、なんだか本当にガンの加工の為に作られたものではないかと思えてしまう。これを大量に購入し、グリップ裏面にザラザラと流し入れる。フレームと干渉しないよう、すりきりいっぱいまで入れ、全体に慣らす。そこに粘度の高い接着剤を流し込み、固定させた。乾燥後、さらにその上からポリパテを盛っておもりを見えなくする。表面を平らに削っておもりの仕込みは完了だ。裏表ともブラックパーカーで塗装をし、乾燥させる。これで超ヘビーウエイトグリップの完成だ。この作業を左右のグリップそれぞれに施してある。

フレーム、スライドにもおもりを詰め込んである。隙間という隙間に詰め込んだ。フレームはトリガーガード前方の先端部分、スライドは後端のハンマーの両脇の空間にそれぞれ埋め込んで重量を稼いでいる。表面の処理は耐水ペーパーで平面を出し、余計な刻印も消し去った後、真鍮ブラシで磨いて処理をした。ちょうどヘビーウエイト材のブルーイングをする際のような感じで磨き上げる。角のエッジを残しつつ塗装が食いつくようにする為だ。こうして下地を作り、塗料はキャロムショットのブラックスチールを使用した。いつものメタルパーカーではP230の繊細なイメージとは違う。もう少し落ち着いた色合いが似合う。結果的にこの色をチョイスしたのは正解だったようで、スライドの刻印が実にはっきりと現れた。チャンバー部はメッキシルバーで塗装、エキストラクターやテイクダウンレバーは「か」の好みを考慮してフラットアルミで塗装。ちょっとしたアクセサリーのようなアクセントだ。またアウターバレルは繰り返しのコッキングに耐えるよう、キャロムショットのステンレスシルバーにしている。

ステンレスシルバーに塗装したアウターバレルともともとシルバー色のインナーバレルに一体感が生まれ、一層新品の雰囲気が出た。マズル付近の眺めはまさに「これから使い込んでいくぞ」というまっさらな輝きが表現できた。その他トリガー、セーフティ、ハンマー、マガジンキャッチ、マガジン底板はもともと金属製の黒染めであるのでそのままとしている。そのセーフティだが、これがとてもよく出来ており、スプリングが内蔵してあり、適度なクリック感が感じられる作動となっている。作動時にはカチッという音を発し、しっかり機能していることが解かる。ハンマーは可動するが、起した状態で止めておくことは出来ない。つまりスプリングの力で戻ってしまうのだ。この辺はやはり¥1200−程度の造りだ。マガジンキャッチには太めのスプリングが入れられており、しっかりとマガジンを押さえる。これは日本製のトイガンでも弱々しいものもあるというのにとて信頼感のあるキャッチだ。撃っていてポロッと落ちてしまうようなことはまず無いだろう。

さて、出来上がったP230を手に、あらためてその仕上がりを確認する。各部に詰め込んだおもりのお陰で手に感じる重量はKSC社製のガスブローバックガンのP230とほとんど変わらない程の重量感だ。「コッキングガンだ」と言わない限り、持っただけなら誰も気付かないだろう。そして仕上がりも決して同社製のP230に劣らないレベルにまでディテールアップされている。安い価格のトイガンである程仕上げに燃えてしまうのが私の悪い癖だ。このアカデミー社製P230も、もはや「おもちゃ」ではなく、立派な「模型」になった。「か」の反応がとても楽しみである。



(2006.11.10)