中野自動車 整備レポート
みなさんがDIYで愛車をいじる際の参考になれば・・・と思い、こんなページを作ってみました。簡単にでき、しかも安い予算で愛車を甦らせることができるちょっとした小技を紹介します。みなさんがいつまでもお気に入りの愛車に乗れるように・・・。         なかなか見ることのできないエンジンオーバーホール作業の風景のページはこちら

今回はあるお客さんのひとことで記事にすることにしました。「こういう重整備の風景って普通のお客さんってあんまり見たことないんじゃない?ましてエンジンの中身なんて普段見る機会あまりないっすよ。」確かに言われてみればその通りですね。私は仕事でやっている訳ですからしょっちゅう見ていますが、それに慣れてしまってごく日常の風景にしか思えなくなっておりました。ということで今回は「誰でも簡単に出来る」ではなく、「あまり見ることのない、そう簡単には出来ない」部分をお見せします。
これは三菱の4A30という660ccの4気筒エンジンのオーバーホールの1コマです。→写真は組み上げたシリンダーヘッドの完成図です。このエンジンは走行80000kmで、アクセルを踏み込んだ時やエンジンブレーキ時にマフラーから白煙が出るという症状が起こっていました。毎日使用している方なのですが、1週間でエンジンオイルが2gもなくなってしまいます。漏れている形跡はまったくありませんでした。ということは混合気とともにオイルも燃焼してしまい、量が減っているということです。「オイル上がり」や「オイル下がり」と呼ばれる難病です。
オイル上がりとは各気筒のピストンに付いているピストンリングの磨耗や、ピストンの外面、シリンダーの内面等にキズが生じてそこからオイルが燃焼室に入り込んでしまい、ガソリンの混合気とともに燃えてしまい、白煙となってマフラーから出てくるものです。
オイル下がりとは燃焼室の上(天井に当たる部分)には吸気と排気のバルブがありますが、このバルブが開閉する際、上下運動するバルブの付け根(カムシャフトのある部屋との境目)にオイルシールがあります。このオイルシールはゴム製で、年月が経つと硬くなって、シールの役目を果たさなくなってきます。最終的にはカチカチに固まったオイルシールは亀裂が生じ、そこからオイルが燃焼室に入り込んでしまいます。そうなると「オイル上がり」の時と同じようにオイルも燃やされ白煙が出る訳です。
このクルマの場合、どちらの症状とも思える状態で、同時進行と判断しました。いずれにせよエンジンをオーバーホールするのですからどちらが原因であっても両方とも処置するので問題はないのですが。で、そのバルブシールを交換する際に、このエンジンの上半分(ヘッドと呼びます)をキレイに洗浄して組み上げたのです。各バルブに1つのバルブシールで合計16個(吸気8個、排気8個。同じ部品です)を1つ1つ手作業で組み付け、バルブを取り付けます。バルブ周りの作業は細かい手作業の繰り返しです。
上の写真のヘッドを裏から見ています。4気筒それぞれの燃焼室が横一線に並んでいますね。各燃焼室に吸気2個、排気2個のバルブがあり(写真上側が吸気、下側が排気)、計4つのバルブの中心にスパークプラグの取り付け穴があります。このエンジンはペントルーフ型燃焼室と言って、家の屋根のような形状です。ごく一般的な形状です。写真の面が下になるので、シリンダーヘッドガスケットがこの面に密着します。写真の上の方で上向きに開いている大きめの穴は吸気ポートです。ここにインテークマニホールドが付き、吸気がここからエンジン内(燃焼室)に送られる訳です。このエンジンはSOHC4バルブ型でヘッドはかなり小さくまとまっています。ゆえに細かい作業が要求されます。バルブの擦り合わせも通常は「タコ棒」と呼ばれる木の棒の先に吸盤が付いた道具をバルブに吸着させて、キリで穴を開ける要領でバルブを回転させて擦り合わせるのですが、このエンジンのバルブは極端に小さいバルブなのでタコ棒は使えません。そこでバルブを差し込んだ状態で指で回転させて擦り合わせることになります。
燃焼室のアップです。4つのバルブがはっきり見えます。上の2つが吸気、下の2つが排気のバルブです。どのクルマもそうですが、吸気バルブの方が排気バルブより大きめになっています。理由はいろんな意味あいがあるのでここでは省きます。説明しているととてつもなく長い文章になりますので。この写真で見ると燃焼室がキレイに金属色でしょ?普通は80000kmも走っていて、しかも白煙出しているクルマはこんなにキレイじゃありません。真っ黒です。バルブもくぼんだ部分が完全に埋まる程真っ黒いススがこびり付いています。これも同様な状態でしたが、キレイに洗浄したからこんなにキレイなのです。これだけキレイにしたんですから完成後はできるだけこの状態を維持していただきたいものです。
さて、次はシリンダーブロックの方を見てみましょう。今回の作業のメインの部分です。シリンダーの内面にはキズはまったく見られませんでした。ピストンにも損傷はありませんでした。なので今回はボーリングはせず、ピストンも交換しません。
写真右から1番シリンダーです。左が4番です。1番と4番のピストンが上死点にきてます。これは1番シリンダーを圧縮上死点にしているからです。エンジンをいじる際(このようなオーバーホールに限らず調整等も含めて)、必ず1番シリンダーを基準にするためです。各ピストンの頭もキレイに洗浄してありますが、今回、開けてみて白煙の原因が3番シリンダーだったことがこの汚れ具合で判明しました。3番のピストンだけが強烈に汚れていたのです。バラしていくと確かに3番ピストンのピストンリングだけが極端に磨耗していました。このようにはっきりと原因が解かると気持ちのいいものです。とはいえピストンリングは4気筒分セットになっていますから当然すべてのピストンリングを交換してあります。
当店ではオーバーホール作業には和光ケミカルの「エンジン組みつけペースト」を使用しています。組み付け直後の油膜の切れた状態でエンジンを始動させてもこのペーストがあれば削られるのをしっかり防いでくれるから安心です。そして始動後はオイルに溶けてなくなってしまいます。とても便利なアイテムです。
現在、まだ作業中ですが、完成した暁にはきっと元気に走り回ってくれることでしょう。みなさんはなかなかここまでの作業はやる機会はないでしょうからオーバーホールの作業がこういうモノなんだっていうのが感じていただけたらと思います。次回はまたみなさんにも試していただける内容のレポートをお送りします。(2005.11.06)

さて、今回はシートのお話し。体のデカい人や姿勢の悪いヒトの乗っていた(いる)クルマは変なふうにシートがヘタレてきます。ここでご紹介するシートはアルトワークスのシートです。130000kmを越える走行距離で、座面がベッコリへこんでいました。幸い、背もたれの方はまったくヘタってなかったので、今回は座面クッションの再生をすることにしました。クルマからシートを外し、座面部と背もたれ部を分離します。別れた座面をバラしていくと・・・とんでもないことが起こっていました。シート座面にはクッションとスプリングがあり、クッションを支えているスプリングの伸び縮みで座っているヒトを快適にさせているのですが、そのスプリングを引っ掛けるステーが片側根こそぎはがれてしまっているのです。ステーがはがれてしまっているとスプリングは役目を果たすことができず、片側に引っかかって宙ぶらりんです。つまりクッションの力だけでヒトの重みに耐えなければならないのです。これでは柔らかいクッションは簡単にちぎれてしまい、座面がごっそりおっこちてしまいます。このシートもお尻の乗っかる部分がコの字型にちぎれていました。正直、これは交換したほうがてっとりばやい!!と思いました。早速、部品屋さんに注文を入れるも、即座に「生産中止」の返答が・・・。悪あがきをしてみる。中古部品をあたってみる。即座に「ありません。」の返答。さらに悪あがきは続く。セルボモード(ターボ系)の純正シートでも可!!と言ってみる。やはり即座に「ありません。」の返答。本当に探しているんだろうか?と疑ってしまいたくなる程の素早い回答。これはもう自力でなんとかしろという神のお告げだ・・・。それから私は重い腰を上げ、座面を完全にバラしました。

溶接でくっついていたステーはやはり溶接で付けるしかありません。穴を開けてボルト止めでも悪くはないのでしょうが、薄い鉄板でできたステーだけに強度的に疑問です。早速付き合いのある板金屋さんに行き、溶接をしました。メーカーではスポット溶接を施してありましたが、今回はそれだけでは不安なのでぐるりと一周を徹底的に溶接しました。念には念をということで外れていない側も同じように溶接しました。こうしてしっかりくっつけたシート本体。さすがにしっかりしています。次はクッションです。これは破けている以上交換するか接着するかしかありません。前者は先程の理由でできません。コの字型にちぎれたクッションを優しくもとに戻して押さえてみると・・・ちぎれた部分がしっかり合いました。そこでちぎれ面に大量の超強力接着剤を塗りたくり、変な位置でくっつかないように慎重に貼り合わせます。座った時に座面に段差が出来てしまっているようでは困ります。なんとか元通りくっつけることができました。これで一晩乾かします。

乾いたクッションを本体の上に載せてみます。何事もなかったかのように平らで違和感がなく見えます。「接着剤ごときで耐えられる訳ねーじゃん!」と思っているヒトもいるでしょう。しかし、耐えるんです。間違ってはいけないのはクッションはあくまでクッションなのです。ヒトの体重を本当に支えているのは前述のスプリングなのです。だからステーが剥がれ落ちるという現象が起こってしまうのです。つまり、クッションは座るヒトの座りごこちを担当し、支えるのはスプリングということです。だからしっかり接着したクッションは同じところが再びちぎれることはほとんどありません。同じような壊れ方をしない限り・・・。さて、乗せたクッションに表面の生地を被せていきます。張りのある出来栄えにするためにはズレないようにしっかり引っ張りながら被せます。シート生地を止めているのは独特の止め具。太い針金をまるめたようなモノです。これをニッパーを2個使って元のようにしっかりまるめて止めます。これが出来上がったら、当店の部品取り車からアルトエポのシートを取ってきます。同じようにバラし、下に付いているスプリングだけを取り出します。あとは使いません。

元々付いていたスプリングを溶接したステーに引っ掛けます。かなり重いヒトが座っていたのでしょう、少したわんでいます。そこでプライヤーで強制的に縮ませて再び引っ掛けます。するとバチン!!としっかり引っかかりました。が、縮めたスプリングは必ずまた伸びます。そこで先程、部品取りのシートから外したスプリングの登場です。「2重がけ」です。ワークスのシートにはスプリングが4本かかっています。しかし、普通のアルトには3本しかありません。そこで一番体重がかかる部分にだけ2重がけを行います。こちらのスプリングは非常にしっかりしていてそのまま使用できました。これで背もたれ部等をすべて取り付けて完成です。座ってみると、純正とは思えない程しっかりしており、レカロ等のスポーツ系シートのような硬くて疲れないシートになりました。これなら長距離でも疲れなさそうです。座面もあんなに陥没していたとは思えない程まったいらです。

いかがでしょう。スプリングの2重がけ。これは効きますよ。ヘタな社外シートなんかよりはるかに良い座り心地です。今回の一連の作業はほぼ「シートのオーバーホール」になってしまいましたが、スプリングの2重がけだけでも別のクルマのように劇的に変わります。シートがヘタってきたなぁ・・・と思う方はゼヒ試していただきたいチューンです。これを読んで「自分にはとてもできない」と思ったヒトは当店に相談してみてください。安くても効果絶大です!!
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