MGC Colt Woodsman
Model Gun
発火済みモデルガンを中古品として購入するというのはある意味、博打的なものである。作動の状態は確認できても、その内部の状況まではその場で確認することはできない。そういう意味で、モデルガンの中古品は未発火品を買うのが安全と言える。私は元来ガンは「遊んでなんぼ」と思っているので、発火済みであってもタメライ無く手を出す。壊れていれば治せば良い、部品が足りなきゃ作れば良いという考え方だ。今回のネタであるMGC製モデルガン コルト ウッズマンはまさにそんな1挺だ。箱無し、取扱説明書無し、カートリッジ無し・・・ようするにこの本体とマガジンのみの状態で販売されていたものを購入したのだ。このウッズマンという銃は以前から気になっていた銃で、実銃では精密射撃競技に用いられる競技用銃で、口径は.22LRという極小な弾丸を使用する。実弾の直径は5.56mmでエアガンのBB弾よりも小さい。この.22LR弾は競技用の他に特殊な隠密作戦時の特殊部隊が使用したりもしている。ワルサーP22やスタームルガーMk1〜3等実際に軍用として投入されている銃も多数存在している。弾が小さいということは、それだけ少ない火薬で激発できるということであり、サイレンサーを取り付けることで、無音(実際には小さい発射音がする)で標的をHITさせることができるのだ。

ウッズマンは現在、入手可能なトイガンは無い。このモデルガンはMGC製だが、現在は生産されていない。過去にはコクサイ等他メーカーからもリリースされていたが、モデルガン人気が衰退し、エアガン人気が高まってくるとその流れに飲まれるようにいつしか消えて行った銃である。そんなウッズマンがたまたま「か」と立ち寄ったリサイクルショップに並んでいた。ガラスケースの中でディスプレイされた他のガンはちゃんと並べられているのに対し、このウッズマンだけは無造作に放り投げられているようにころがっていた。確かに外装はお世辞にもキレイとは言えない。キズだらけで発火後の手入れもまったくされていない様子で、他の商品と一緒に「ついでに引き取ったから並べときゃあ売れるべ」くらいの扱いだ。しかし、私の目は光ったのだ。確かにガラス越しに見るこのウッズマンはキタナイが、トリガーやマガジン等に激しい損傷は無く、手の入れようによってはちゃんと作動するのではないか?と思ったのだ。

店員を呼び、ガラスケースを開けてもらう。手に取り、状態を確認する。スライドはスムーズに引ける。トリガーもギクシャクした動きは無く、しっかりしている。マガジンも予想以上にサビが少ない。これなら復活できると確信した。しかし、スライド尻部には前オーナーのイニシャルだろうか、「S.H」という彫り込みがなされ、汚らしい。それも結構深々と彫られている。バレルやスライド側面、グリップフレームにも深いキズが多数ある。はたしてどこまでこれらのキズを消すことができるのか・・・。その場で考えていても仕方がないのでとりあえず連れて帰ることにした。こうしてウッズマンのレストア作業が始まることになったのだ。ただ、カートリッジが無いのは非常に痛い。人気のある9mmパラベラムや.45ACP等のカートリッジは純正以外にも多数販売されていて簡単に入手できるが、.22LRはあまり見かけたことが無い。はたして入手することは出来るのだろうか・・・。とりあえず入手できると仮定してその時が来たらすぐに発火させられるよう今は本体をしっかりレストアすることだ。

バラしていく。通常のオートマチック拳銃とは違って競技用銃独特の分解方法に少々戸惑いながら各パーツを外していく。完全分解後のスライドが右の画像だ。尻に「彫り物」がされているのがよく解かるだろう。「S.H」だ。ショート・ホープかサンシャイン・ハンバーグか・・・何を意味するのかは解からないが、とにかく「S.H」だ。どうしてこういうことをするのだろう?と呆れてしまう。センスのかけらもない。対処法をじっくりと考える。塗装で仕上げるならパテで埋めてしまえばどうということは無い。しかし、このウッズマンは私の完成後のイメージは塗装仕上げでは無いのだ。このキズだらけの地肌を完全に磨き上げ、ABS樹脂の地のまま艶々に輝かせたいのだ。こういう無惨な状態のモノ程その完成した時の輝きが際立つというものだ。だからなんとしてでも塗装ではなくポリッシュ仕上げで完成を目指す。そこで、私が考えたのは同じ材質のものならパテ代わりになるということだった。

先日、製作した東京マルイ製「造るモデルガン」M29の箱には部品を切り取ったランナーが残っている。こいつを利用してABS用パテを自作することにしたのだ。まずはランナーを適当な長さに切り、粗めのヤスリでどんどん削っていく。削りカスを塗料皿に貯めていく。各部のキズに盛ることができるくらいの量になったらABS専用接着剤を削りカスに垂らし、よく練る。しばらく練り続けていると削りカスが溶け始め、黒いネチャネチャのパテのようになる。ひとすくいしてタラァ〜っと垂らしてみるとどうも色が薄い。さらにカスを追加して練る。接着剤だけに硬めのパテになったが、程よい色合いの溶けたABSの出来上がりだ。ABS専用接着剤は乾燥時間がやたら長いので、色合わせをしていても固まってしまうことは無い。何度も削っては混ぜ、削っては混ぜて色を合わせた。こうして出来上がったABSパテが右の画像だ。これをキズの部分に盛っていくことになる。

盛る準備をしている間にザラザラしたパテはさらに溶けてトロトロになっていた。ABS専用接着剤の威力は凄まじいものである。まさに目から鱗である。わずか数分の間に粒子状のカスが完全に溶けてしまったのだ。ふたたびヌチャヌチャと練る。真っ黒のカレーとでも表現すべきか、なんとも言えない不思議な、不気味な物体が出来上がっていた。練る時にかき回していたランナーも先端が解けてフニャフニャになりかけていた。もうここまで来るとエイリアンのヨダレのようだ。このふやけたランナーを筆代わりに各部のキズに盛っていくことにした。多めに取ってはキズに盛り、伸ばし広げてキズを埋めていく。耐水ペーパーやコンパウンドで消せる程度のキズはそのままにしておく。今はとにかく深いキズを埋めるのだ。全体のキズにパテを盛ったら乾燥させるのだが、通常、単に接着させる為に塗った接着剤でさえ、2〜3日は最低でも放置しておかないと乾かないのだから、今回は1週間放置することにした。

盛った直後のABSパテとスライドの画像。カタチはともかく、色は合っている。このまま完全に硬化してくれれば大成功である。毎日硬化の状態を確認した。ABS専用接着剤は固まっていくと「縮み」が発生する。盛ったそのままの状態で固まってくれる訳ではないのだ。かなり厚めに盛ってはおいたが、それでも見る見る痩せていく。4〜5日目にはプラカラーを筆で塗ったくらいにまで痩せていた。「さらに盛るべきか!?」と思ったが、「縮み」はどうやらその辺で落ち着いてくれた。1週間が経ち、指で触ってみると、カチカチに固まっていた。これならもう成型しても大丈夫だ。ヤスリを手に切削に入った。他のキズはともかく、とにかくあの「S.H」だけは完全除去しなければならない。削る手にも気合が入る。大まかにカタチが出来てきたら、耐水ペーパーに切り替えて再び削る。600番からスタートして最後は1200番まで使用して削ってみた。この時点ですでにあの忌々しい「S.H」は影もカタチも無い。ほっと胸を撫で下ろす。他のキズの部分も同様に削り込み、よく乾燥させる。

最後に粗めのコンパウンドで磨き、さらにピカールで磨く。出てきた艶はまるで漆塗りのような輝きで、そこに「S.H」があったとは到底思えない仕上がりだった。同時にパーティングラインも消えてツルッツルだ。全体にさらにピカールで磨きをかける。グリップも同様にとにかく磨く。金属パーツは真鍮ブラシでサビを落とし、保護膜を形成する為、シリコンオイルを吹きつけ、よく擦り込む。もともとブルーイングしたような美しい青いパーツとサンドブラスト処理をしたような艶消しのグレーのパーツがある。青いパーツは鉄製で、グレーのパーツは亜鉛合金製だ。ブルーの鉄製パーツは磨いた後、さらにピカールで軽く擦る。亜鉛合金製パーツはあくまで艶消し状態を保つ為、汚れを落とす程度で軽く磨いてそのままだ。各部のねじやピン類はやはり磨いてサビや汚れを落とし、シリコンオイルを塗ってサビ止めとねじ山が潰れないよう潤滑の意味も込めて処理した。

グリップは濃い小豆色とでも言おうか、独特の色合いだ。こちらも徹底的に磨いて細かいキズを消してある。画像のコルト社のシンボルである跳ね馬マークはとてもよく出来た彫刻で、周りに気を付けて馬だけを丁寧に磨いた。右側のグリップはスライドストップのスプリングを固定する働きも兼ねている。しかし固定用のねじは真ん中に1本だけだ。スライドストップ付近が微妙に浮き上がってしまう。これは構造上どうしようもない。握るとその浮き上がった分の隙間がギュッという音とともに無くなっていく。丁度電動ガンのフォアグリップを握った時に出るあの音に近い。実銃のグリップが上下2本で固定するガバメントのようなタイプであればこの音も解消できたのだろうが、1本ねじではどうしようも無い。しいて言えば、グリップ前端部を爪でフレームに固定し、その上でねじ止めという構造にしていてくれていればまだこのような現象は起きにくかっただろう。他の部分の出来が良いだけにここはとても悔やまれる部分だ。

リアサイトは亜鉛合金製で、上下調整式。クリックの付いたアジャストスクリューで調整を行う。ベースのパーツにサイトのパーツをピンで固定し(前側)、後端にスプリングを挟み込み、アジャストスクリューで締め付ける。これでサイトが上下に調整できるしくみだ。競技用銃や軍用銃ではお馴染みの調整方法だ。ベースの固定はスライド内側から小さなねじ2本で締め付けている。2本で固定しているだけあって実にしっかり取り付けられている。サイトがガタつくようではどうしようもないが、これだけがっちりと固定されていれば発火の衝撃にも充分耐えられそうだ。表面処理は他の亜鉛合金製パーツと同様の仕上げだが、よく擦れる部分である為、角の色が剥げている。ただ、これはこれでとても良い雰囲気で剥げているのでとくに気にならない。むしろリアルである。このサイトが部品単体で入手できれば他のガンにも転用が利きそうだ。弾の飛ばないモデルガンに付けておくのは少々もったいない気がする。

チャンバーはガッポリ全開に開く。ガバメントやPPK/S等のように小窓が開いているタイプだと、しっかり調整しないと排莢時に空カートリッジがひっかかったり詰まったりするが、ウッズマンではその心配は無さそうだ。エキストラクターの位置や形状から見てこれだけ全開になるが、空カートリッジは一応右側に飛ばされる構造になっているようだ。カートリッジが欠品しているので試すことが出来ないのが残念である。マガジンリップの位置やチャンバーのカートリッジを受ける部分の形状を見ると、スムーズな給弾、排莢が出来そうな構造だ。なんとか.22LRのカートリッジを入手しなくては・・・。スライドの動きは実にスムーズだ。リコイルスプリングは細めで長いものがスライドに仕込まれている。通常のオートマチックガンとはちょっと構造が違う。これによってスライドの引きの強さや戻りの速さが決まってくるのだが、手動で動かしている分には実に心地よい作動である。不具合がでそうに無いような頼もしい作動だ。

レストア後、完成して各部の作動をしっかりと確認するが、どの部分も実にスムーズに作動している。マガジンもキャッチを押せばスルリと抜け落ちてくる。それでいて装填する際はカチャッと小気味良くしっかり装填でき、ガタつきも最小限だ。あのボロボロだったウッズマンがよくもこれだけ甦ったものだと我ながら感心してしまった。あとはとにかくカートリッジを手に入れてぜひガンガン発火させてみたいと思っている。その時が来るのがとても楽しみになってきた。MGC製モデルガンの発火性能をこの目で確かめてみたい。入手できた際にはまた追加レポートをしたいと思う。

(2007.01.15)